71、笑顔の人 (5/1:世界笑いの日)

 彼女は、いつも笑っていた。

 楽しい時も、苦しい時も。手ひどく失敗しても、親友からの手痛い裏切りに遭っても。

「だから、彼女はみんなから好かれていた」

 彼の言葉に、私は頷いた。なるほど、いつも笑っている人を嫌う者はそういないだろう。

「写真の中でもいつも笑顔だった」

 彼が一息おく。

「例えそれが、親友の葬式でも」

 息を呑む私に、彼は続けた。

「その時に彼女を撮った写真はどれも笑顔だったんだ」

「まさか」

 思わず私は口を開いていた。

「親友が死んだことを喜んでいた?」

 親友からの手痛い裏切り――

「いや、それもそうなんだけどね」

 彼が声を潜める。

「遺族ならともかく参列者にすぎない彼女の写真を何枚も、一体誰が撮ったんだろう?」

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