70、めくる (4/30:図書館の日)

 ページをめくる。

 新たに生を受けた主人公が、呪われた世界を救う宿命に目覚める。

 ページをめくる。

 バベルの図書館の司書が予言する。

「そなたはどこにも辿り着くことはないだろう」

 ふと、この本を渡してくれた現実の司書の顔が、そしてその言葉が思い返された。

『この本を読み切った者はこれまで一人もいないんだ』

 たしかに分厚い。が、読み切れないほどではない。内容がつまらないわけでもなく、どころかページを繰る手が止まらない。

 ページをめくる。

 世界を呪う存在との戦いに身を投じ、一敗地にまみれる主人公。

 ページをめくる。

 主人公の魂が新たな身体に宿り、呪われた世界に再び産声を上げる。 

 主人公の復活を心底喜びながら、そして私は――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る