64、リスニング (4/20:「聴く」の日)

 有名私立大学の入試会場。

 英語の試験で流されたリスニング問題に、彼は頭を抱えた。どう考えてもひわいな文章なのだ。

 聴き取りミスか思ったが、周囲も一瞬ざわついていた。間違いないだろう。だが、そんな問題を入試で出すだろうか?

 悩んだが、終了時間も迫っている。

 ――仕方ない。ここはもう、直訳で乗り切るしかない。

 彼はペンを走らせた。

 これは私のバットです。一緒に使いましょう――

「その子も大概だな」

 入試フリークの友人の話に、私は思わず笑った。

「入試のプレッシャーってやつだろうな」

 と、友人。ふと、疑問が頭をよぎった。

「にしても、なんで会場がざわついたんだ?」

 友人が笑みを浮かべる。

「そりゃあ問題が簡単すぎたからだろ」

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