62、喜劇の構造 (4/16:チャップリンデー)
「喜劇というのは頭の上の眼鏡さ」
ソファにもたれ、喜劇王は言った。
「必至に探しているのに見つからない。当人にとって、それは悲劇だ。だが、周りから見たら喜劇になる」
「なるほど」
私はメモ帳にペンを走らせた。記者として彼の自宅で取材中なのだ。
と、ドアから美しい女性が入って来た。
「ああ、家内だよ」
喜劇王の紹介に、彼女は無言で紙をテーブルに叩きつけた。離婚届だった。
「何でだ!?」
叫びとともに立ち上がる喜劇王。彼の妻がため息をつく。
「分からないの?」
そう吐き捨て、彼女は部屋から出て行った。喜劇王がソファに崩れ落ちる。
「なぜ……」
気まずい沈黙が流れる。耐え切れず、私は言葉をかけた。
「その……さすが喜劇王です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます