60、ボトルメール (4/12:世界宇宙飛行の日)
宇宙巡査員・トムは巡回中、標準軌道外に一隻の宇宙船を発見した。
型番を確認すると、五年前に事故で音信を絶った一人乗り宇宙艇だった。
「もう中のやつは死んでるな」
巡査艇を横づけする。
「ちょっとしたタイムカプセルってとこか」
船内へ一歩入った途端、彼は立ちすくんだ。
壁も床も、びっしりと文字で埋め尽くされていた。
試しにいくつか読んでみると、どれも故郷の恋人への想いを綴ったものだった。
奥へ進むと、宇宙服を着た人物がひとりうつ伏せになっていた。手にはペン、床には書きかけの――書き切れなかった文字が並んでいる。
「タイムカプセルってより、でっかいボトルメールってわけだ」
そう呟くと、トムは宇宙服の彼女へ最敬礼した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます