60、ボトルメール (4/12:世界宇宙飛行の日)

 宇宙巡査員・トムは巡回中、標準軌道外に一隻の宇宙船を発見した。

 型番を確認すると、五年前に事故で音信を絶った一人乗り宇宙艇だった。

「もう中のやつは死んでるな」

 巡査艇を横づけする。

「ちょっとしたタイムカプセルってとこか」

 船内へ一歩入った途端、彼は立ちすくんだ。

 壁も床も、びっしりと文字で埋め尽くされていた。

 試しにいくつか読んでみると、どれも故郷の恋人への想いを綴ったものだった。

 奥へ進むと、宇宙服を着た人物がひとりうつ伏せになっていた。手にはペン、床には書きかけの――書き切れなかった文字が並んでいる。

「タイムカプセルってより、でっかいボトルメールってわけだ」

 そう呟くと、トムは宇宙服の彼女へ最敬礼した。

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