56、巡る (4/4:ヨーヨーの日)

「あ、手車てぐるま

 私の言葉に一瞬きょとんとした後、彼女は笑った。

「ああ、ヨーヨーね」

 春の公園。私の視線の先では、子どもが二人ヨーヨーで遊んでいる。

「同い年なのに、やたら古い言葉使うよね」

「歴史は繰り返す」

「何それ」

 笑う彼女からそっと視線を逸らす。

 この時代にタイムスリップして5年。生活には慣れてきたものの、まだ言葉遣いは完全には直せていない。時にぎこちなくなってしまう日常。

 けれど。

 ここには平和がある。そう、自分のいた時代――23世紀よりずっと。

 その時代、戦争を始めた日本では敵性言語は厳しく取り締まられていた。古めいた言葉遣いはそのせいだ。

 歴史は繰り返す。くるくる回るヨーヨーを眺め、私はため息をついた。

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