55、絡まり合う (第85回Twitter300字ssお題:紙)
「紙の表と裏」
冷たい台に寝そべって私は囁きました。隣に横たわる彼女は静かに聞いています。
「折り曲げない限り、その二つが出会うことは永遠にないのでしょうか?」
自分の言葉に、私は首を振ります。
「いいえ、それ以前にすでに両者は結ばれています。紙というのは繊維の集まりですから。薄いけれど、あの中では表も裏もなく繊維が絡まり合っているんです」
彼女が頷きます。うれしくなり、その唇にキスをしました。
「だから」
彼女の白い身体を抱き寄せると、もう一方の手で台の外にあるレバーを倒しました。響き渡る重低音。次いで、頭上からプレス面がゆっくりと降りてきました。
離れてしまわぬよう、私は両の腕にしっかりと力を込めました。
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