54、体内時計リセッター (3/31:体内時計の日)

 私は朝が極端に弱い。

 遅刻は日常茶飯事。諦め交じりの「仕方ないだろ、人間だもの」が常套句だった。だから、その商品に目を留めたのは必然といえる。

 家電店で見つけたそれは、【体内時計リセッター】と銘打たれていた。売り文句は『あなたの錆びついた体内時計をリセット!』。なかなか挑発的だ。

 一箱買ってさっそく開けると、小さい六角レンチのようなものが出てきた。取扱説明書を探したが見当たらない。

 どうやって使うのか? 試しに耳に差し込んでみたが、恥ずかしくなってやめた。

 店へ戻り店員に尋ねる。

「ああ、簡単ですよ」

 そう言うと、店員は私の後頭部をまさぐり始めた。

「あれ?」

 素っ頓狂な声が響く。

「お客さん、配電盤はどこです?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る