50、橋 (3/21:彼岸)

 三途の川への架橋に成功したのは、在野のアマチュア科学者だった。

 これにより、死者の霊は彼岸と此岸を自由に行き来できるようになった。

 再会に泣く者、犯罪を暴かれ項垂れる者――無数の悲喜こもごもが繰り広げられた。

 殺人は大きく減った。なにせ死者に証言されてしまうのだから。

 一方、次第に自殺が社会問題となっていった。死ねば今より自由に過ごせる――そんな気軽な感覚で自殺する者が増えたのだ。

 橋の取り壊しが議論された。だが、これまで自殺した者の人権はどうなるのか。彼らは橋があるから自殺したのだ。

 議論が紛糾する中、全世界で犯罪が急増した。

「死ぬのは怖くない、だから、自分の好きなようにする」

 そして――人類は滅亡した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る