49、何もない (3/19:カメラ発明記念日)

 友人二人と山奥の廃病院へ行った。

 いわゆる心霊スポットで雰囲気は満点だったのだが、残念ながら心霊現象に出会うことはなかった。撮った写真を確認するも、こちらも期待外れの結果に終わった。

 ただ――

 病院内で二人ずつ記念撮影をした写真。そのどれも、向かって左端にぽっかり空間が空いていた。まるで、そこに三人目がいるかのように。

 いたずらではない。俺はちゃんと画面中央に二人を捉えていたし、友人たちも同様に言い張った。そこで最終的に、カメラがぶれたのだと自分を納得させた。

 けれど。

 今でも、誰かと写真を撮ると左端に空間が空いてしまう。原因は分からず、実害は何も起きていない。ただ、気持ちだけがそのたびにざわついている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る