48、平凡な漫画 (3/17:漫画週刊誌の日)

 その漫画を見て、俺は卒倒しかけた。

 マイナー雑誌に連載された実録漫画。そこに描かれていたのは、俺が起こした殺人事件そのものだった。

 事件は迷宮入りしたはず。だが、漫画では俺しか知らないだろう詳細まで描かれている。

 目撃された? だとしたらまずい。口封じが必要だ。

 探り当てた漫画家の自宅へ向かった俺は、そこで立ち尽くした。

 家の前に黒山の人だかりができていた。

「みんな、自分のことを描かれたと思ったらしいですね」

 問題の漫画を読みながら、刑事が言った。すでに騒ぎは一段落している。

「にしてもこの漫画、平凡すぎてつまらないですよ」

「だからこの騒ぎだろ」

 警部が答えた。

「犯罪なんて似たり寄ったり、陳腐なものなんだから」

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