45、最後のコラム (3/11:コラムの日)

 編集部をクビになった。

 部数より記事の質が大切だと主張したら、明日のコラムが最後の仕事だ、と。

 ならば。

 私は縄の輪っかに首をかけた。

 自殺して、その経緯をコラムに書いてやる。

 すでに原稿は送ってある。載せれば部数は伸びるが、大炎上で雑誌の廃刊は必至。編集長の苦い顔が思い浮かぶ。ざまあみろ。

 と、ドアが勢いよく開いた。そこにいたのは、密かに想いを寄せていた同僚だった。

「間に合った」

 きっと、原稿を見て駆け付けてくれたのだ。

「……ありがとう」

「いいから早く済ませて」

「は?」

「社員が止めに駆け付けたが、間に合わずに目の前で自殺された」

 呆然とする私に、彼女は肩をすくめる。

「その方が盛り上がるだろうって、編集長が」

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