38、白い膝頭 (2/25:膝関節の日)
彼女との出会いは劇的だった。
登山の途中、崖から落ちかけた僕を彼女が引っ張り上げてくれたのだ。
握った手の感触、踏ん張る彼女の白い膝頭、そして華奢な背中。すべて鮮明に覚えている。
こうして二人付き合うことになったが、次第に違和感が膨らんでいった。
非力な彼女が大の男を引っぱり上げられるものか?――必死ならばそんなこともあるだろう。違和感の原因は別の所にあった。
視界に膝頭が映っていたあの時、僕の目は彼女の背中も捉えていた。そう、彼女は背を見せつつ膝頭をこちらに向けていたのだ。
そんな姿勢は人体の構造上あり得ない。では、彼女は一体――
「どうしたの?」
彼女が微笑みかけてくる。僕は、出かかった問いを飲み込んだ。
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