37、不眠の効用 (毎月23日:不眠の日)

「もう何日も一睡もしてないんです」

 私の訴えに、医師は言った

「あなたのような人を探していたんですよ」

 私は一人の男性を紹介された。彼の家は大邸宅で、彼自身も見るからに大富豪だった。

「今晩、世界に二つとない宝石の見張りをしてほしい」

 起きねばと思うと眠くなる。自然の摂理だ。熟睡だった。これ以上ないほどの。目覚めてすぐ私は真っ青になったが、そこへ現れたのはここを紹介した医師だった。

「眠れるようになったみたいですね」

 すべて治療のための芝居だったという。安堵とともに怒りが湧いたが、確かに不眠は改善したのだ。不承不承ながら礼を言うと、医師はにこやかに頷いた。

「セット、役者代含めて治療費五十万六千円になります」

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