36、名前の功罪 (2/21:東京初の日刊新聞創刊日)

「姓名判断って信じるか?」

 オカルトマニアの友人の質問に、俺は首を振った。

「信じるわけないだろ」

「でも、ちゃんとした証拠があるんだぜ」

 友人は身を乗り出した。

「つい最近、ある物好きが新聞記事に載るのが多い名前を調べてみたんだ。すると、ある苗字だけ突出して多いことが判明した。その割合、何と全体の15パーセント」

 俺は絶句した。それはもはや誤差どころの話ではない。

「何の記事に載った名前だと思う?」

「殺人犯、とか?」

「惜しい」

 彼が指を鳴らす。

「犯罪被害者の名前さ。ほぼ全員がね」

 そう言って、彼はその名を告げた。それは――俺の苗字だった。

「……作り話だろ?」

「どうせ信じないんだろう?」

 そう言って、彼は笑った。

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