28、ワン・ツー・スリー (1/23:ワン・ツー・スリーの日)

「ワン・ツー・スリー!」

 掛け声とともに、サテン地の赤布が翻る。そこには何もなかった。

 がっくりと肩を落とす彼に、思わず吹き出す私。

「……失敗を見るのがそんなに楽しいか?」

「ごめんごめん。あまりにも見事だったから」

 彼がため息をつく。

「何もないところに何かを出すのって、難しいんだよ」

「いや、そんな正論言われても」

「道具が悪いんじゃないか」

「腕が悪いのよ」

 道具のせいにしようとする彼をたしなめる。

「まあ、誰だって最初は失敗するものよ」

「練習あるのみ、か」

 彼はまた布を構えた。無から有を――宇宙を創り出すために。

「ワン・ツー・スリー!」

 またしても、そこには何もなかった。

 神といえど、天地創造は難しいのである。

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