22、鏡開き (1/11:鏡開きの日)
むかしむかし、ある村に酒の強い男がいた。
いくら飲んでも酔わず、一晩で酒樽を五つ空けることもあった。小柄な身体のどこに酒が入っていくのか、村の者は訝しがるばかりだった。
ある日、ついに村の酒を飲み尽くしてしまったため村人たちと争いが起き、男は腹を刺され息絶えてしまう。と、腹の中から泉のように酒が溢れ、以降、村では酒に困ることはなくなったという。
「で、後にそれが鏡開きの儀式になったんだ」
彼は得意げに言った。
すでに深夜、町内会の鏡開きで残っているのは彼と私だけだ。
二十あった酒樽はもう残り一つ。ほとんどを彼が飲み干している。
ちらと彼の腹を見た。まるで私を誘っているかのように、それはぷっくり膨らんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます