22、鏡開き (1/11:鏡開きの日)

 むかしむかし、ある村に酒の強い男がいた。

 いくら飲んでも酔わず、一晩で酒樽を五つ空けることもあった。小柄な身体のどこに酒が入っていくのか、村の者は訝しがるばかりだった。

 ある日、ついに村の酒を飲み尽くしてしまったため村人たちと争いが起き、男は腹を刺され息絶えてしまう。と、腹の中から泉のように酒が溢れ、以降、村では酒に困ることはなくなったという。

「で、後にそれが鏡開きの儀式になったんだ」

 彼は得意げに言った。

 すでに深夜、町内会の鏡開きで残っているのは彼と私だけだ。

 二十あった酒樽はもう残り一つ。ほとんどを彼が飲み干している。

 ちらと彼の腹を見た。まるで私を誘っているかのように、それはぷっくり膨らんでいた。

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