まもなくオープン⑤

営業許可書の手続きを終え、お店となる場所にリンと二人で行くことにした。


「リンって昔、あそこで働いていたんだね。知らなかったよ」


「隠してましたからね」


「よく今まで、隠し通せたね」


この世界は、前世以上に噂がすべてだ。

この世界には、テレビがない。

必然的にニュースは、掲示板か噂になってしまう。

その為、簡単に噂が流れてしまう。

隠し通すのは至難の技らしい。


「いろんな人に口止めしましたからねぇ」


「なんで、そんなにバレたくなかったの」

単純な疑問だ。

普通はそこまで隠そうとしないはずだ。


「恥ずかしいので絶対に誰にも言わないでくださいね」


「分かってるよ」


「私は、元々メイドの仕事をしたかったんです。でも、親のツテの関係で商業ギルドに就職したんですが……………やっぱりメイドがやりたかったんです。」


「今の説明では、なんで噂を隠すのか分からないんだけど……………」



「それは、もし、噂が広がって私のご主人様に伝わってしまったら事務作業をやらされる可能性があると思ったんです……………」


この説明でやっと、合点行った。

夢を追うためだったのか。


確かに、メイドを雇うのは貴族だ。

ほとんどの貴族は金持ちだ。

その為、どの貴族も事務作業や会計などの仕事があるのだろう。


「なので、今の生活が楽しいんです」


そんなこと言われちゃうと、何か恥ずかしくなる。

だって、今の俺のメイドをしてくれていることで、満足してくれているのだ。


「なんか、ありがとう」


「急にどうしたんですか感謝なんて」


「いやぁ~なんか嬉しかったから」


「なんか照れますね」


「うん」


「手、つなぎます?」


「なんで?」


「なんとなくです。……………やっぱ忘れてください」


「うん。じゃあ、先にお店に着いた方が勝ちね。よ~いドン」


「あっ、ずるいです。待ってくださいよ~」



今日も仲良く、楽しく生きている。


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