十七 斜陽
野外 斜陽夕
雲低 野雀鳴
濃花 埋石隙
晴後 聴春聲
野外 斜陽の夕(せき)
雲低(た)れて 野雀(やじゃく)鳴く
濃花(のうか) 石隙(せきげき)を埋め
晴後 春聲を聴く
暖かくなるにつれて、日も長くなる。昼間の雨も小降りになってきた。雲の隙間から覗く夕陽が、濡れた小径を照らしている。近所にお届け物ができて外出しなければならなくなったが、これなら出かけられそうだ。
傘を差して一歩踏み出す。表通りの街路樹で雨宿りをしていたらしい雀が、少しだけ騒がしくなってきた。葉陰から鳴き声だけが響いてくる。以前に比べ減っては来たが、都会に比べればまだ多い方だろう。
歩道と縁石の間にあるわずかな隙間に、濃い黄色の花を見つけた。寒い頃には見かけなかった花だ。名も知らぬ小さな花だが、鮮やかな色に、季節の移り変わりを感じる。そこだけが、周りと違う風景に見えた。
空を飛べそうな気もする日永かな
届け物を済ませた頃には、雨は上がっていた。一雨ごとに暖かくなる。日没前の風は、どこか柔らかくて優しい。知らないところで咲いている花もあるのだろう。その香りを運ぶ風は、何だか春の匂いがした。
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