十六 登山
春氣満山腹
雨多草木深
風來望忽開
山上獨閑吟
春氣 山腹に満ち
雨多くして 草木深し
風來りて 望忽ち開き
山上 獨り閑吟す
散歩に良い季節になった。小さな山のある近所の公園まで、足を伸ばした。標高六メートルちょっとの、申し訳程度の山だ。小学生が「秘密基地」を作るのに都合のいい枝振りの木が生えていて、昔お世話になった。
昨夜、雨がまとめて降ったおかげで、土や草の匂いがはっきり分かる。特に下草は、明らかに増えてきた。今年も、小学生が道を踏み固めていくのだろう。木々の緑が濃くなれば、強い日射しも和らぐはずだ。
公園のある斜面の反対側は、県道に面した崖になっている。道路拡張のため、山が削られたのだ。そこから眺めると、気持ちよい風の中に、生まれ育った街並みが見える。見晴らしがいいと、理屈抜きで気持ちがいい。
春一番甍(いらか)の波と雲少し
昔習った歌「こいのぼり」の出だしは「甍の波と雲の波」だった。目の前に甍の波はあるが、雲は吹き払われてほとんどない。小さな声で歌い始めて、雲の少ない空に困ってしまった。何とも難しいところである。
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