十四 尋梅花

野橋微帯露

風暖静山泉

雨後梅花綻

閑吟日午天


野橋 微かに露を帯び

風暖かに 静山の泉

雨後 梅花綻び

閑吟す 日午の天


 出張の帰りに、山道を通った。渓谷にかかる橋では、ゆっくりクルマを走らせて景色を楽しむのが良い。路面も少し湿っている。山道ゆえ、こうした様子も風情がある。路側帯があったのでクルマを止め、外に出た。

 二月の風は、少しだけ暖かい。山の湧き水を汲む場所が整えられていて、ペットボトルを持参した人たちが列を作っている。近くには「道の駅」もあって、日中はやや賑わいのある場所でもある。

 こんなところにも、家を建てて住んでいる人がいる。家の横に植えられた木に、白い花が見える。梅の花だ。雨上がりの枝に開いた梅の花は、花びらの白を目にするだけで香り立つような印象を受ける。


 咲き初むる梅花の白や雨上がり


 一句詠んでみたが、何か落ち着かない。心が弾んだままでは、対象を冷静に見ることができないのかもしれぬ。言葉を選んで推敲を重ねてみるが、のどかな日射しの中、のんびり昼寝がしたい気分でもある。

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