十 夜行

半夜離村舎

枯枝落道標

竹林霜雪色

寒月影寥寥


半夜 村舎を離れ

枯枝 道標に落つ

竹林 霜雪の色

寒月に 影寥寥たり


 どうしても外せない用事があって、夜遅くに家を出る。明日の朝に出ていては、到着が遅れて差し障りがあるためだ。年季の入った愛車のエンジンは、寒い中でも機嫌良くスタートしてくれた。

 道を確かめながらの安全運転。対向車もほとんどないため、ヘッドライトはハイビームのままだ。最初の分かれ道では、案内表示の下に枯れた小枝がたくさん落ちていた。冬の強風に、枯れ葉は吹き飛ばされたらしい。

 道路脇の竹林は、霜や雪をかぶったように白い。クルマのライトに照らされて、そう見えるだけかもしれない。竹林の色は、いかにも寒々としている。同じ地下茎から何十本も生える竹。何か別の生き物にも見える。


 寒満月白く竹林やせほそる


 路側帯にクルマを停めて小休止。見上げれば雲一つない空に白い月。その光に照らされた竹林の影は、微動だにしない。物寂しい黒々とした影の下には、寒さに耐える竹の地下茎が隠れている。

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