十二 祝新年

可喜輕寒候

乾杯望青天

酒仙吟淑氣

相對祝新年


喜ぶべし 輕寒の候

杯を乾して青天を望む

酒仙 淑氣を吟じ

相對して新年を祝う


 寒さは残るものの、新春という言葉の響きには華やぎがある。寒さがわずかに軽くなるような感じがするのだ。年が改まって、そこはかとなく温かな心持ちになるのかもしれない。もちろん気のせいである。

 飲兵衛にとっては、朝から酒を飲んでもかまわないとされる数日。杯を高く掲げて窓を見れば、外はいい天気だ。そぞろ歩きもいいが、明るいうちから飲める酒はまた格別の味わいである。

 飲むだけでは物足りなくて、新しい年を言祝ぐ詩を吟じてみたくもなる。そんな雰囲気での酒は、「百薬の長」にふさわしい味わいと、さらには風格すら感じさせる。壮大な気分になって一句。


 たまきはる命の水や屠蘇の杯


 屠蘇(とそ)は正月に飲む薬酒で、年少者からいただくのが通例。「命」につながる枕詞の「たまきはる」が、まさに魂に響く思いがして、屠蘇の酔いを気持ちよく深めてくれる。この酔いは、祝祭の祈りに似ている。

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