六 寺泊
古刹寒風宿
推窓見白池
雪中名月夜
無語獨酒巵
古刹 寒風の宿
窓を推して 白池を見る
雪中 名月の夜
語(ことば)無く 獨酒の巵(さかづき)
禅僧は、自らの修行のために徒歩で旅をしたという。旅先では、野宿するか寺に一夜の宿を求めるかのどちらかだ。江戸期の高僧・良寛も、師に一本の杖を与えられて行脚の旅に出た。
晩年の良寛が過ごした越後の五合庵も、旅先の山寺と大差なかっただろう。むしろ五合庵のほうが粗末だったかもしれない。窓を推して開ければ、外は雪景色。煎餅布団だけで暖も取れず、ただ震えるだけの夜。
でも良寛は、そうした冬の夜に楽しみを見いだした。寒ければ震えていればいい。震えて眺める名月は、震える自分とは関係なく美しい。周囲の施しで暮らす良寛は、今そこにあるもので毎日を楽しんだ。
寒月の照らす庵の在ればよし
良寛が僧になる前の名は「栄蔵」。晩年の彼は、自分の生涯が結局「栄蔵生」つまり栄蔵としての日々だったと述べている。自分に理解できる心境ではないが、寒月を眺め、在りし日の高僧を偲ぶ杯を掲げたい。
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