七 月夜

露凝方丈夜

雲凍雪中風

五更東籬静

天寒月玲瓏


露は凝る 方丈の夜

雲は凍る 雪中の風

五更 東籬静かに

天寒く 月玲瓏たり


 山里は、夜になると急に冷え込む。大気中の水蒸気すら水滴となって、土間に付着しさらに凍りついてしまう。夜気は、狭い部屋の隅々にまで行き渡る。麓と違い、日没後の気温の変化は体感できるほど速い。

 ここまで寒いと、空気まで凍ってしまいそうでもある。降り積もった雪は固くなり、風の無い空には細い雲が張り付いている。無理に引きはがそうとすると、ペリリと音がしそうだ。山の夜は、雲も凍るものらしい。

 ここまで寒いと、なかなか寝付けない。気がつけば午前三時を大きく回り、下手をすれば明け方まで目を覚ましたままになりそうだ。東の垣根を月明かりが照らしている。ここで一句。


 方丈の土間に露凝(つゆこ)る夜は長し


 振り向けば、西の空に冴え冴えとした月。寒さに風も凍てつき、ただ月の輝きだけが残っている。全てを削り取った後に残された美は、それだけで価値がある。余計な説明は、一切いらない。

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