第7話

 プルル……。部長のスマホが鳴った。

「もしもし。おぅ来たか。すぐ行く」

 弁当箱を袋に入れ、椅子を折り畳んで腰をあげる。入口に立つナツメの横まで来たとき、部長は睨むような目つきで「ちょっと来い」と声をかけた。

 社長も社長だが、商品に愛着のない社員が部長の役職についていることに腹が立つ。赤いきつねを何だと思ってるんだと、これは今後のナツメの就業意欲に関わる大きな問題でもあった。

 


 部長のあとをついていくとそこは第二会議室。扉を開けると工場の人間がふたり居て、ポットが用意されている。テーブルにはカップ麺が置かれていた。

「お世話になります、山岸部長」

「急がせて悪かったね」

「いえ。やっぱり新しいのはいいですね」

 その男の名札に工場長の肩書きを見ると、かなり前から水面下で話が進んでいたことが伺える。カップ麺の蓋には黄色いあさりの文字があり、ナツメはつらくて新商品を直視できずにいた。

「工場長ーー。悪いが僕はたった今弁当を食べたばかりでね。川原くん、君が試食しなさい」

「私がですか?」

「君は屋上にお喋りに来て、昼ご飯まだなんだろう? いいですよね、中野内さん」

「えぇ。もちろん」

 

 

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