第3話

『あちゃー。人間に見られた』

『おねえさんブチョーのなかま?』

「喋った……。赤いきつねと緑のたぬきって実在したんだ……」

『ねぇ、ブチョーのなかま?』

「部長? 山岸部長ならうちの部だけど」

『ボクら、ここに棲んでんだ』

「ここに? みんな知ってるの?」

『ううん知らない。いつもは姿をけしているんだけど、今ひじょうじたいでうっかり……』

「非常事態?」 

 赤いきつねは神妙な面持ちで事情を説明する。

『ことしきたブチョーだよ。アイツがね、ボクらをいんたいさせようとしてるんだ』

「引退?」

『ボクらのじだいをおわりにして、これからは黄色いあさりにするんだって』

「あさり? 何それ」

 緑のたぬきは、赤いきつねの横でポロッと蕎麦つゆみたいな色の涙をこぼす。

『おねがい、ブチョーをやめさせて。ボクらのカップ麺がなくなったら、この世界からきえちゃうんだ』

「まさかぁ。なくならないって。ロングセラーで誰もが食べてる定番商品だよ?」

『ブチョーがいってたんだ! これからは黄色を使うって』

『アイツがボクらをけそうとしてる!』

『アイツはこのかいしゃのテキだよ!』

 たぬきときつねは二本足で立ち、身振り手振りでナツメに訴えた。

「うーん。だったら社長に相談する?」

『社長はひこうきでとおくに行ってるから、ムリだよ』 

『何とかして、おねえさん!』

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