第43話

261

京都のお茶の師匠夫妻がやってきた。[どうもいらっしゃいませ。どうぞおかけになってください。][こちらに九十九なすの茶入れと花活けがあると聞いたので、見せてもらおうと思ってな。]


[はい。ありがとうございます。こちらになります。]師匠[見事なものだな。もちろん漆は塗っていないのだが、全く同じように赤漆の地肌こげ茶の漆がかかったようにとなっている。


ボカシ具合も絶妙だ。花活けの切込みも利休師匠の定寸と変わらんよ。この作者は茶の大家と同じ境地にいるな。世界的にもまれだ。この2点をいただくよ。支払いは振り込みです。][すずさん、振り込みですので見積書をお願いします。][はい。こちらですが、7,700万円になります。]


師匠[サスケさん、前のように瞬間移動で自宅までお願いできますか。][はい。承知しました。こちらにどうぞ。][どうもありがとうございました。][すずさん、いつものあんみつをお願いします。][はい。すぐに行ってきます。]


チヨ[2つで7,700万円なんですか。]昴[どのくらいのお金かわかんないや。]チヨ[私にもわかりません。]遠州[さすがに京の師匠は見逃しませんね。][そうだな。利休の刻んだ寸法まで頭に入っているのはさすがです。]

262

ベトナム原産で王様が改良を加えた恐竜鳥の丼ぶりが人気ということなので、江戸八に王様とスタッフが食べに来た。店内の雰囲気が明るくなったようである。今までランチは一応出していたというような消極的なものだったが、


このどんぶりでランチの時間も大忙しになっている。毎日の売り上げは当初より20パーセントは上がっていて、目標の3か月目には30パーセントをクリアできるとのことだ。


すず[うまいですねこの恐竜鳥丼。リピーターが多い感じですよ。][ブロイラーの30パーセントアップで揃えられるんで、やり易いと思うよ。何しろ比内やコーチンよりもうまいからな。]サスケ[そうですね。他で食べれない美味くて安い食材を握っているのは大きいですよ。]

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サスケ[対岸にラスベガスとブロードウェイそれにハリウッド潰しのオールドハリウッドを造って、閑古鳥状態になっているラスベガスの現場でも見に行きますか。][犬も泊まれたら行こうか。]


[どこもOKだそうです。他に誰もいないんじゃあないんですか。][じゃあ長兵衛さんを入れて4人と2匹だ。][はい。わかりました。]


ラスベガスで1番のホテルだが半値で犬OKになっている。エントランスに入ってもお客さんはほんの少しだけである。サスケ[いつもこんな感じですか。]店[はい。最近はいつもこのようです。][将来が不安ですね。][たいへん不安です。]


ホテルの周りの道路にも、ほとんど人通りがなかった。サスケ[これはもういっちょあがりですね。]長[マフィアが揃って難癖をつけるパターンですが、バリアーで入れませんから完璧にエンドです。最後の夢の跡を見ておくのもいいですよ。]

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チェックインを終わって部屋に行こうとしたら、CDカセットを持った16歳ぐらいの黒人ハーフの娘が歌を聞いてくれと言ってきた。3曲1,000円だという。

なぜかユリとゴン太がワンワンワンワン。と4回吠えた。


[わかったそこで座って聞こう。ホテルの人には注意されないか。][お客様が全然いないから大丈夫ですよ。ホテルの人はむしろお客さんが喜んでくれるんだったら、歓迎すると言っています。][じゃあやってくれるかな。]


娘[最初はフラッシュダンスのwhat a feelingで後の2曲はオリジナルです。]踊りながら歌っているがリズム感は抜群で声も独特で魅力的である。2曲目はオリジナルでピアノだけのバック演奏だが、リズムがあってなかなか行けている。3曲目は一同から拍手が起きて感動モノであるが、黒人哀歌のアメージンググレイス調の切々としたものである。


サスケ[これはいけますよ。オリジナルなら見逃す手はありません。][両親はいるのかな。][はい。施設で育って、今はこのようなことをやっています。]

[あなたを育ててみたいが保護者はいるかな。][はい。施設の寮長さんです。]

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[それでは今からそこに行こう。これはチップ込みだ。]1万円札をそっと渡した。[こんなにいいんですか。]娘を乗せて寮長に会いに行った。サスケ[私は隣の国の王宮の関係者ですが、この娘のエンターテイメント性に魅力を感じまして国に連れて行って育ててみたいと言っています。許可を願えますでしょうか。]


[王様と申しますと、先日に子供50人を治療した人ですか。][はい。そうです。これが私のパスポートと名刺です。][なるほど。施設育ちと言ってもとても心配です。他に身分を証明するものがありますか。][私がその国王です。これは私のパスポートです。インターネットで調べてみてください。]娘がすぐにパスポートを見ながら携帯で調べた。


娘[本当に王様です。]と言って寮長に携帯を見せた。[それはどうも失礼しました。これからどうなりますか。][はい。私はそこのオールドハリウッドのオーナーでもあります。そこに歌や踊りをトレーニングするものがいますので預けます。

266

もちろん生活に支障がないように衣食住の支援もしますし、順調にいけば半年か1年後にはデビューできるようになると思います。私はオールドハリウッドやクルージング会社のエンターテイメントをやっている会社のオーナーでもありますから、きちっと教育してデビューさせますし報酬も仕事に見合った額を支払います。それとデビューの前には本人と社長にこちらに挨拶に行かせます。]


[すべてはあなたの判断次第です。どうしますか。][私は一緒に行って勉強したいです。][そういうことですので、よろしくお願いします。][それでは荷物を持って10時に来てください。][私はパスポートもありませんが。][それは全く心配ないですよ。はっはっは。これは施設への寄付です。]と言って100万円を渡した。


[これはどうもありがとうございます。では明日行かせます。][お待ちしています。]

すず[マリーナで会った時のウロスさん以上ですよ。サスケ[私もそのように思います。]

267

翌日、約束通りに娘がやってきた。車に乗せてまずビバリーヒルズに立ち寄った。

長[ほとんどが売り物件です。ここも夢の跡ということですかね。まあ、5分の1ぐらいだったらどうですかね。]売り看板だらけの所を一回りしてすぐに、オールドハリウッドに戻ってきた。昨日に連絡をしていたのでエンターテーメント社長で本多正純の2番目の弟の正三と従事官が待っていた。


[ご苦労さん。この娘が昨日話した子ですが作曲して歌いますが、きちっと作品の保護をしてこの娘に合った教育をしてください。目標は半年から1年以内のデビューです。それからこの娘は施設で育っているので私と家内が親代わりになります。何かあったらすぐに私に連絡をしてください。][はい。承知しました。]


[それから彼女。私はあなたの親代わりですので困ったことがあったら何でも相談をしてください。これは300万円が入っているキャッシングカードです。当面の費用に役立ててください。]

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娘は目をパチクリさせて、[え~。300万円も入ったキャッシュカードをいただいていいんですか。][好きに使っていいよ。他に何か欲しいものがあったら、いつでもいいから連絡しなさい。][はい。わかりました。どうもありがとうございます。]


すず[そうですね。作詞作曲というのがいいです。一発嵌ればアメリカンドリームという感じですが、見出した王様ももちろん評価されますよ。][身寄りがないんで姉や兄的な面倒を見てくれるかな。たぶん出世をすると思うから、実入りもデカいと思うぞ。]


すず[はい。私の妹分にしますよ。ほんとうに当たりそうですもん。][私も兄の感じでコンタクトを取り、ちょこちょこ見てきますよ。]

黒猫がやってきた。”ミャーゴ”。この猫が頷いたから間違いないぞ。



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