第28話

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夏見の陶芸店に戻ったらコーヒーチェーンの社長と元店長が来ていた。

[だいぶ売り上げが伸びているようだな。][はい。コンスタントに以前の売り上げの1.5倍になっています。つきましては新しい豆をチェーン店に配布するとともに支援チームを2班に分けて、各店の指導に当たらせたいのですが。]


[わかった。これからは社長の下で直接に各店長たちにここで学んだ知識を伝授するとともに、新しい店長にも伝えてください。社長、この店長のランク一つ上げてくれるかな。][わかりました。そのようにします。それではまた報告にあがります。]

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昴とチヨそれに犬の兆助は王様が会社買収の厳しい交渉を応接室の物陰からいつものように聞き取り勉強をしている。

[昴にチヨちゃん。ジュースでも飲むかな。お菓子はもみじ屋かカステラにどら焼きだ。][チヨちゃんは何がいいの。][私はどら焼きです。][ボクも同じです。]


[すずさん、みんなに飲み物とどら焼きをお願いします。][はい。わかりました。][少しはわかることがあったかな。]昴[まだわかりませんが、みんな一生懸命です。]チヨ[お金を稼ぐのは大変なことがわかります。]

得撫島に別宅を造るために来ていたが。先日にサスケ達スタッフが視察で泊まった、王様所有の国後島の温泉の滝付きのホテルに到着した。

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オーナーであり国王一行なので総支配人以下がきちっと整列している。宮内省の担当者が張り付いているので鍵をもらうだけである。王様とチヨを入れた家族とサスケやすずのスタッフとは別部屋であるがランクは一緒である。


すず[最高ランクのお部屋はやっぱりいいですね。なんかリッチになった気分です。]長[ロシアのホテルもいろいろ泊まったけど、このホテルがベストだな。ホテルの敷地に温泉の川が流れて滝壺が天然の浴槽になる、というのは聞いたことが無いぞ。


知床半島のカムイワッカの滝も同じようなものだけど、あそこにはホテルが無いな。たぶん国立公園内だからこれからも建たないだろ。]サスケ[聞いているうちに行きたくなった。水着に着替えないといかんのだな。]


川の温泉に王様達はすでに来ていた。犬3匹も一緒である。[そこの犬達、こっちに来なさい。]と言って川の湯をかけて洗ってしまった。

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犬達は元気に川に入ったりして飛び回っている。子供達も水着を着て行儀良く入っている。滑ったりすると危ないので、志野から注意を与えられているのである。すず[この自然の中の雰囲気はいいですね。ここは料理も最高ですよ。やっぱり北の海産物は最高です。][上がったらすぐに食事にするから、屋外ラウンジに来てくれるかな。]


子供たちは最初おとなしく遊んでいたが、すぐに川を滑り台にして犬達とじゃれあっている。[十勝ワインにするぞ。一応もうここは北海道だからな。チヨちゃんは似合っているな。お母さんが買ってくれたのかな。]


[はい。でもあと2年は着なさいと言われているのでブカブカです。][ハッハッハ、子供だからそのくらいはいいさ。すずさんもしゃれているね。][はい。王様からいただいた衣装代20万円で買いました。]一瞬、志野の目つきがキラリと光った。あわてて。[私だけでは無く、こちらの2人もロシア視察の時に同じく20万円をいただきました。]

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チヨを連れてブータンの別宅に来ている。牛肉のべーべキューである。

名人[今日は紫檀入りオレンジと黒米酒です。紫檀入りはオレンジだと1リットル590円になります。紫檀が入ると婦人病に効くと言いますぜ。]


[なるほどそうかもしれんな。味もいいぞ。特別酒として売れるかもしれんので、どんどん造ってくれるかな。赤米もいいけど黒米の方が深みがあるな。]

名[はい。こればっかりの人もいますよ。肉はやっぱり牛肉がうまいな。]娘[あたいはどんな肉でもおいしいよ。]


名[タワンからタシガンまでエアトレインが通りまして、便利になりました。もうすぐここにも駅ができるようですよ。][それは良かったな。いろいろなところに行けるようになるぞ。]

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名[ブータン人もタワンのマーケットに店を出しているんですよ。インドのデスプールから繋がっていますんで、観光客が増えています。以前はパーミットが必要だったんですけど今はいらないでから、かなりの人が来ていますね。]


[ブータン人は商売がうまいから、稼ぐ人も出てくるだろうな。][西と違ってこっちは朴訥で商売はあまりうまくありません。アルチャナルの人も同じようなものなので、ちょうどいいと思います。]


[どんなものが売れているのかな。][はい。タシガンのアルチャナルの物産店ではタワン村に打ち刃物の名人がいますんで、その作ったものと後はタワン名物の漬物です。これはブータンでも人気なんです。よく売れていますよ。タワンではブータンのお線香がよく売れていますが、外国人にも人気です。

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私のところはおかげさまで旦那の会社が全部買ってくれてお金もちゃんとくれますんで、安心して毎日せっせと造っています。][紫檀入りというのは昔から特別な祝い事の時にしか飲まないものなのかな。][そのとおりでさぁ~。紫檀を煮込んだ汁を入れるですが結構高くつきますで普通は作りません。特別な日だけです。]


[ボク達は将来、どんな仕事をやりたいの。]長[ボクは家を守らなければあらないので、お父さんと同じお仕事です。]次男[鶏でもたくさん飼いたいな。]娘[あたいは料理だよ。]


[どんな料理を作りたいの、ブータンのかな。]娘[一度だけティンプーのお店でなんだかわからないけど西洋料理を食べたの。そういうのを作りたいな。][じゃあどこかで中学を卒業したら修行をしなくちゃね。][どこでもいいから入りたいな。]

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今回はどこにも行かずに骨休めのつもりだったけども、名人の知り合いの桶屋に行ってみた。[おたくの仲間の酒造りの親父から聞いてきたんだけども、2リットル樽でいくらかな。][数にもよるけど1個だったら500円で10個だっら450円だよ。]


[そこの親父から買った酒を、日本まで持っていきたいんだけども大丈夫かな。][あたぼうよ。俺のは漏れるようなやわな物は作らねえ。][桶の材質は何かな。][サワラか杉だな。酒樽には杉だ。][それじゃあ2リットル入りを2個作ってくれるかな。明日取りに来るよ。]桶[わかった。作っておく。]


チエと昴も一緒にくっついてきて聞いていた。[王様、樽に入れて売るんですか。][まだ検討中で、いろいろ試してみてからだな。][そこのおじさん腕は良さそうですね。]昴[ボクもそのように思います。][高いお酒だったらプレゼント用にいいだろう。][はい。その通りですけども、注ぎ口にプラスチックのものを付けなくてはなりません。]

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[それを付けるのが一般的だけれども、工夫で何とかなるかもね。ここの親父さんが作ったものをそのままでもいいかもしれないな。まあ、出来上がったのを見てから考えてみようか。]ワンワンワン。ゴン太がそれでいいと言っている。


次の日に取ってきた樽にオレンジと山芋を詰めてもらった。[なかなかいい具合だな。日本までこのまま持って行ってみようか。]すず[私とサスケさんは2本づつ一升瓶を持ってきたので自分用に買ってきますがいいでしょうか。][もちろん好きなようにやってください。ここのを飲んでいると、他のものは飲めんわな。]


昴とおチヨが王様のところにやってきた。[王様、チヨちゃんのアイデアですが桶カップというか湯飲みサイズの桶でできたコップを、プレゼントするか売ったらどうかということです。あの桶屋さんは腕がいいので、貰った人は1万円ぐらいの価値があると思う人もいるかもしれませんし、日本酒とかいろいろなお酒にもあいます。]

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サスケ[それはいい考えで、そこにある樽はとてもいいものです。小さなものの試作品は嫌がるかもしれませんが少し多めにお金を渡して頼み、オーダーするときには数百単位になるかもしれないと言えば引き受けてくれると思います。その桶屋だったら可能ですよ。]


[なるほど。それはいいかもしれないな。早速行ってみるか2人ともついてきなさい。][先ほどはどうもありがとう。とてもいい出来でした。そこで親父さんのいい腕を見込んで頼むのだが、湯飲みぐらいの小さな桶はできないだろうかそれで酒を飲みます。


今回は見本だけれども私は酒造会社をやっているオーナーで、その桶カップができるのだったら数百単位で買うかも知れません。今回はテスト品の購入です。]ちょっと考えていたが。[試作品は1個500円で、まとまった数量の場合は安くするよ。][わかった。それでは2個作ってくるれるかな。明日また来るよ。][作っておくよ。]

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[これでおもろくなった。たしかに1~3万円の価値はあるかもしれないぞ。日本では見当たらないもんな。]昴[チヨちゃんいいのができるといいね。]翌日、3人と3匹で桶屋に行った。


[これかな。サイズを変えて用意してくれてありがとう。口広とやや細くしたサイズの両方ともいいね。1,000円おいておくけど明日までに返事をします。では失礼。]


それぞれの評価をみんなに聞いてみた。

サスケ[良く薄く板を整えて作りました見事です。茶碗の感じでしたら5万円はしますよ。]


すず[日本にも同じように作れる人はいるかもしれませんが数人だと思いますよ。それにこういうものは見たことがありませ。おまけにつけるには高級すぎるかもしれませんが、あえて高級酒のキャンペーンに使ってもいいし、食器を売っていますので手頃な価格で売ってもいいと思います。いずれにしろ買いですよ。]

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志野[そうですね。すずさんの言う通りいずれにしろ買いです。とりあえず100×2でやってみますか、それとも一気に300×2で行きますか。]


サスケ[人気になりますと出所を追及してきますので、秘密にしておきませんといけませんね。私は2,500円の焼酎2本で1個のプレゼントがいいと思います。焼酎は分身で大量生産してしまえばいいのです。


隣の名人が造ったお酒には一切の特典はいりません。お酒自体がプレゼントなのです。この桶カップはプレゼント用とともにすずさんが言っているように、食器として定番にしたらいいと思います。]


[そうだね。サスケさんの線で行きますか。2,500円焼酎を2本で1個のプレゼントと食器としての販売ですね。とりあえず300×2で様子を見てみますか。値付けは買値を決めてからですが、300円ぐらいにしたいな。]


サスケ[そうですね。250円~300円で決まるといいですね。たぶん取引を長く続けるために、こちらの希望している金額になると思いますよ。]

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次の日、同じ3人と3匹で桶屋に行った。

[サンプルを作ってくれてありがとう。買いますよ両方とも。300×2=600個ですが安くしていただけますか。条件が良ければ長いお付き合いになると思います。]


[気に入ってくれてありがとう。600個はいい数字だよ。俺は交渉事は得意でないがいい関係が続くような感じがするので250円でいいけど、前金に半額で引き渡しに半額それと出来上がりまで2週間だ。これでいいかな。][それでは半金を払うけど会社の金で買うので領収書が必要だけど、お金と交換でもらえますか。][もちろん領収書は今書くよ。]


[はい。75,000円です。領収書はいただきました。また来ますのでよろしくね。][またきてくれ、用意しとくよ。]自宅に戻りみんなと打ち合わせである。[成功だな。売値は1,800円ぐらいでいいか。]チヨ[私はそれぐらいでいいと思います。]すず[あら、カンが鋭いわね。まだ九九もできないのに。]


志野[この子は直感が鋭いのよ。]サスケ[そんなとこだと思いますよ。輸送費などはありませんからね。話は違いますが銘木で桶の茶碗も面白いかもしれません。あの桶屋ならプレミアが付きますよ。]


[デザインで高台もつけられたら受けるな。何とか組み込めるかもしれんが、そのうちに聞いてみるよ。]サスケ[臍を使ってやればできます。今までにないのでこれができたら驚きますよ。][チヨちゃんお手柄だぞ。志野さん子供たちにジュースとお菓子をやってくれますか。][はい。ただいま。]







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