第25話

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料理修行中の子供達7人は同じ陶芸ビル内の王様所有の居酒屋江戸八で修業をしている。

[親分、凄いですね。賄い飯を任されたんですか。][そうなのよ。アラ煮用の材料をくれたのであと一品を自分で造れということなの。][アラ煮は難しいジョー。]


タエ[誰でもできるけど、美味しく作るのは難しいわ。]四人組[大丈夫ですよ。煮魚は何度も惣菜屋で作って調味料の配分は身体に染み付いているはずですよ。][そうね。あとは得意の精進揚げにおしんこね。]

[親分の天ぷらはおいしいジョー。][あなた達は自分の仕事をしなさい。]


[板長、賄いができました。チェックをお願いします。][揚げは良く揚がっている。アラ煮も味はいいぞ、合格だ。][良かったですね。豪華野菜ゲソ天もいいです。ボク達は後からになりますけど楽しみです。]


王様は家族とスタッフを連れてブータンの別宅に来ている。今日は隣家との屋外バーベキューである。


酒造りの名人に奥さんに子供3人に大型の赤犬が隣家のメンバーになっている。

名人[酒はこの通り今日は黒米と蕎麦を持ってきたよ。][牛肉はこの通りいっぱいあるので、好きなだけ食べていいぞ。唐辛子と山椒も用意したので味付けは各自が好きなようにやってくれ。こちらはこちらで勝手にやるから。]

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犬達には骨付き肉をそれぞれに与えてある。3人の子供たちは肉が久々なのか、むしゃぶりついている。大人も同じである。[この黒米酒はうまいな。もろみ造りも木桶かな。][もちろんです。もろみ造りや蒸留機にはそれぞれに木桶や木樽を使用しています。味が違うんで。]


すず[蕎麦酒もおいしいですよ。これはいいですね。]志野[私はこの2種類ともに美味しくて、上出来のお酒だと思いますよ。][黒米と山芋に白米に蕎麦ですか、麦はやらないのかな。明日香人は麦も飲むので造ってくれるかな。今の品質と同じなら、造った分のすべてを買い取るよ。


だからもろみ桶を増やし貯蔵用の樽も増やした方がいいな。金が無いのなら貸すよ。][そりゃあまた夢みたいな話だ。容器を揃えるぐらいの金はあります。家内も市場で働かなせなくてすむので大助かりです。]


[ボムディラに私の酒造場が完成したので、親父さんのものは別口として買取り製品化します。買値は1リットル450円で紫檀が入った場合は550円ですね。とりあえず麦を加えた全種類と親父さんが紫檀を入れたら一番うまいという酒を1種類入れて6種類をたくさん造ってくれますか。ただし先ほども言ったように、品質が落ちてしまったらそれでお終いですのでよろしくお願いします。]

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[わかった。品質を落とさないでたくさん作るよ。ところで自分で工場を造るなんてお金持ちのようだけど、旦那さんはどんな人なんだい。なんか偉そうに見えるよ。][はっはっはっ。少しだけお金を持っているだけだ。まだ肉はあるので、どんどん食べてくれ。果物もあるぞ。]奥さん[この果物はなんていうんですか。とてもおいしいですね。]


すず[メロンと言います。子供達にも気にいってくれると思いますよ。][お母さんこれおいしいよ。]名人[ブータン語はペラペラだけどブータン人じゃあないな。どこの国の人ですか。サスケ[明日香王国です。][チベッ〇やウィグ〇を独立させた偉い国ですか。]


サスケ[そうですよ。良く知っていますね。][そりゃあ知っていますよ。あすこの王様は大したもんだとみんなが言っていますぜ。うちのワンチュクとは大違いでさ、うちのはかっこだけでイエスマンに囲まれて全くいけませんや。]


[そうなのか、はっはっはっ。それから親父さんが造っている酒だけど、今までのお得意さんはそのままだけども、私が全部を買い取るので新規の大口のお客さんは無しということでいいかな。全部買い取る約束は必ず守るので親父さんも約束を守ってくれ。][わかった。それは守るよ。]子供たちは持参してきたクッキーの詰め合わせを大事に抱えて持って帰っていった。

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王様は激務を縫ってここに来るのが楽しみになっており、前回と同じように隣家の家族とバーベキューをしている。


今日は鹿肉に猪肉である。もちろん唐辛子と山椒はたっぷりと用意してある。名人[いつもどうもお呼ばれで、白米と赤米を持ってきましたよ。][どれどれ白米はうまいな。米は長くて細いやつかな。][もっと高価なオレンジ米っていうのがあるんですけど、高いの造っても飲む人がいないので作っていません。]

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[ほう、白米なのにオレンジ米って言うのか。][そうなんですよ。少し値段が高くて美味いって言っています。私は貧乏なので食べていませんが。][テストで造るとしたら何リッターからできるかな。][そうだな。50リッターだったら造るよ。オレンジはリッター490円だ。]


[じゃあそれで造ってくれるかな。これは他にやらないで、次に来るまで保管をしていてくれるかな。][わかったよ。おたくの買収の人が木樽に200リッターいっぱいになったら買ってくれて、いつの間にかその樽が空になっちゃうんだよ。それで15日締めで25日にお金を持ってきてくれる。


こちらは木樽に入れて電話ををすればいいので、すごく手間がかからない。うちは芋で6ヵ月で、米が1年は寝かせているんだけども、どの種類でも1週間で引き取ってくれるから大変助かっているよ。なんでも半地下の素焼き甕に入れて貯蔵するらしいね。こちらはそこまでの工程をより集中してできて回転も速いので大喜びでさあ。]

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娘[この肉美味しいよ。あたいは鹿が好きだな。]長男[ボクは猪肉が美味いと思うよ。]奥[野菜も食べなきゃあ駄目だよ。][密造酒で捕まることはないのかな。][はっはっはっ。密造酒なんてほとんどの人がやっているさ。多いか少ないかの差はあるけれどね。勤めが忙しくて、自分で造っている暇が無ければここから買っていく。違いはそれだけだ。]


[今日持ってきてくれた白米と赤米は美味いが、どの種類が一番人気かな。][山芋と赤米だよ。赤米は主食だからなじみが深いんだし、山芋は昔からよく飲んでいるからね。ここらへんで紫芋もとれるけど一般的ではないね。南の方ではタロイモでやっているところもあるけども、あんまりはやってない。]


[麦は麹も麦かな。米で麹を造ることはないのかい。][麦の酒は全部麦さ、米を入れたら味が変わっちまうよ。女房もこっちの方が稼げると言って市場に行くのをやめてしまったけど、ずう~っと買ってくれるよね。]

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[そちらの方で欲を出して少し高く売れるからと、他に売ったなんてことがあると約束違反で、取引を終わりにすることもあるな。だから約束をちゃんと守らなければいけない。][約束を守っていればず~っと続けられるのか。]


[まずまちがいないが品質を落とさないのが条件だ。木桶蒸留器に木桶仕込みそれと木樽貯蔵、この3点をきちっと使用していれば続く可能性があるが他のものに変えたらわからないな。]奥[それは絶対にやらせませんので、買取りを続けるようにしてください。][わかりました。]


すず[イチゴにミルクをかけたわよ。]

娘[このイチゴは大きくて、ミルクをかけるとよけいにおいしいわ。]次男[こんなにおいしいのは初めてだぞ、うっひゃっひゃっ。]犬達は久々の骨付き肉で大満足である。お隣の赤犬も入っている。





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