#39 ヒメカさん、重症化
金曜日の夜
森山くんと翌日土曜日の勉強会のことで通話する。
「明日なんですが、朝からお邪魔してもいいですか?」
『朝からでもOKですが、何時ごろです?』
「9時頃とか・・・」
『早すぎないです!? 何が漆原さんをそんなに駆り立てるのですか!?』
「試験直前だし・・・少しでも早く勉強始めようと思って・・・」
『わ、分かりました。 9時ですね。準備しておきます。 あ、あと手土産とかのお気遣いは無しでお願いします。 毎回毎回申し訳ないので』
通話を終えて、今日学校での森山くんを思い出す。
森山くんは今変わろうとしてる。
わたしとの距離もこれまでより少しだけ近づいてくれた様に感じた。
もしかして・・・明日の勉強会って更にもっと近づけるチャンスなんじゃ???
昨日ハルコちゃんからは「今度の勉強会は私は邪魔しませんので、お二人でごゆっくり」と気を使ってくれたメッセージが来ていたし。
今まで誰の目にもつかない場所での二人っきりの状況って、私の部屋で過ごした時だけ。 あの時は、ドズルくんのこと関係なく手を繋ぐことに成功した。
今度もチャンスかもしれない
どうしよう・・・
あんなコトやこんなコト・・・
◇◆◇
そして翌朝、森山邸の前
「9時の約束なのに、8時前に来ちゃった」
正確には、今7:45
2階の森山くんの部屋を見上げると、まだカーテンが閉まっている。
今日土曜だしね、まだ寝てるよね・・・
すると、庭のドズルくんが私に気づいてくれた。
わん! わん!
「ドズルくん、おはよ~」
ドズルくんに挨拶をしていると、庭に面したリビングの窓が開いて、お母さんが出てきた。
「あら!ヒメカちゃんもう来たの???」
「おはようございます。 すみません・・・早く来すぎてしまいました」
「おはようございます♪ イチローまだ寝てると思うから、上がって頂戴! そだ、イチロー起こしてくれていいから!」
「えええ!?」
でも、コレって・・・森山くんの寝顔を拝めるチャンス!? ゴクリ
「で、ではお言葉に甘えてお邪魔します」
「ふふふ、イチローびっくりするわね♪」
お母さん、相変わらず朝からノリがいい。
お母さんが玄関を開けてくれたので、小さい声で「おじゃまします」と言って上がらせてもらう。
お母さんも小さい声で「そーっと2階に上がって」と言ってくれたので、言われた通りに音を立てないように階段を上がり、森山くんの部屋の前まで行く。
ドキドキしてきた
扉に手をかけてゆっくりと開ける。
部屋の中はシーンと静か。
先週と同じく、森山くんの匂いで充満している。
そっと部屋に踏み入れ、音を立てないようにベッドに近づく。
森山くん、寝てる
寝顔、超可愛い・・・
そだ!
写真!
音を立てないようにバッグからスマホを取り出し、森山くんの寝顔を色々な角度から写す。
カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ
室内にスマホのシャッター音が響く
ムフー ムフー
気が付くと、自分の鼻息が凄く荒くなってる
森山くんの寝顔写してたら、いつの間にか興奮してた
ムフー ムフー
不味いわ
こんな時に森山くんが起きたら、ヘンタイだと思われる
わたしは森山くん中毒だけど、ヘンタイじゃない・・・はずよ。
一度、落ち着こう。
ベッドから離れて、上着を脱ぐ。
深呼吸しよう。
スーハー スーハー
あああ! 思いっきり森山くんの匂い吸いこんじゃった!
もうダメ
脳が蕩けそう・・・頭くらくらしてきた
鼻息が更に荒くなり、自分でも顔が熱くなってくるのが分かる。
もう我慢できそうにない
私はフラフラとした足取りで再びベッドに近づき、布団の上から森山くんに覆いかぶさるように抱き着いた。
森山くんの温もりを感じると、今までの興奮が波が引くように静まり、代わりに安心感と幸福感に包まれて、そして意識が薄れていった。
10分後
「おにーちゃん起きてる! ヒメカさん来てるんでしょ! 早く朝ご飯食べてだって!」
ハルコは母親に言われてイチローを起こしに来ていた。
もちろん母親からは、ヒメカが既に来ていてイチローを起こしていることも聞いている。
しかし、返事がない。
「入るよ!」
おかしいな?と思いつつも何の疑いもしていないハルコは、一声かけて扉を開け放つ。
そして、部屋の中を見て固まるハルコ。
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