#40 朝チュン?
部屋の中を見て固まるハルコ。
ベッドでは抱き合う二人。
「な!?」
ハルコだってもう中学3年生。
二人の男女がベッドで抱き合っている意味くらい理解出来る。
「ちょ!何してるんですか!」
しかしハルコが叫んでも二人は動かない。
「んん? 二人とも、寝てる???」
ベッドに近寄り改めて確認すると、イチローは布団を被ったままで、その上からヒメカが抱き着き寝ている。
『うう~・・・メギドの炎が・・・空から・・・重い・・・Zzz』
「スースー」
「コレって、寝ているお兄ちゃんにヒメカさんが抱き着いて、そのまま寝てる???」
ハルコはおもむろにスマホを取り出し、寝ている二人を撮影しはじめた。
引きで全体
アップで二人の寝顔
苦しそうなイチローの寝顔アップ
涎を垂らし幸せそうなヒメカの寝顔アップ
「よし、良い物が撮れました」ククク
そのタイミングで、イチローのスマホからアラーム音が鳴り響く。
『うう~ん』
「うう~ん」
ようやく目を覚ました二人。
『あれ・・・・ぬお!?』
目が覚め、今の状況に気が付くイチロー。
「むにゃむにゃ・・・へへへ、森山くんだぁ」
まだ寝ぼけており、夢の中と現実が混同しているヒメカ。
黙ってイチローのスマホのアラームを止めるハルコ。
『何故ココに漆原さんが!? ま、まさか女神降臨!!! 聖女から遂に女神様に!?』
「お兄ちゃん、朝ご飯出来てるよ。 早く降りて来て下さいよ」
混乱中のイチローにそう言い残し、部屋を出て扉を閉めるハルコ。
『う、漆原さん!起きて下さい!』
「う~ん・・・あれ・・・ひゃぁぁぁぁぁ!!!」
◇◆◇
1階の食卓にて、朝食を済ませた取調官イチローは容疑者ヒメカに対する尋問を行っていた。
『つまり・・・昨夜考え事していて寝るのが遅かった上に今朝早く起きしてしまい、寝不足のまま約束の1時間以上前に来てしまったと?』
「はい・・・」
縮こまって、なんとか返事を返すヒメカ。
『はぁぁぁ・・・・』
盛大なため息を零すイチロー。
その様子をニヤニヤしながら眺める森山ファミリー。
『それで、なぜ僕の上に乗っかって寝てたんです?』
「それは・・・その・・・内緒?」
『内緒?じゃねーよ!!! 漆原さん!アナタは無防備すぎます! 僕がもしチャラいイケイケのヤ〇チンだったらどうするんですか! 嫁入り前に大変なことになってたかもしれないんですよ!』
「も、森山くんはイケイケのヤリ〇ンじゃありません!」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて下さい。パパもママも居る前でヤリチ〇って叫ぶのはどうかと思いますよ」
「あら、お母さんは気にしないわよ? そういう年頃だもんね? うふふふ」
『ぐぬぬぬぬ』
「はぅ」
「今日は試験の勉強会なんでしょ? お説教はそれくらいにして、勉強始めた方がいいですよ?」
ハルコに窘められ、少し冷静になったイチローは、ヒメカを連れて自室に戻り、勉強を始めることに。
「森山くん・・・まだ怒ってます?」
『いえ、もう怒ってません』
「うう、やっぱり怒ってる・・・」
『はぁ・・・怒ってませんよ。 ただ、目が覚めたら女性に抱き着かれてたなんていう経験無いので、まだ動揺してるんです』
「ごめんなさい・・・」
その時、ノックも無しにバーンと扉が開き、ハルコが仁王立ちしていた。
「話は聞かせてもらいました!」
ハルコはそう言うと、右手に持ったスマホの画面を二人に見せるように掲げた。
スマホの画面には、涎を垂らしたヒメカの幸せそうな寝顔が表示されている。
「コレを見て下さい! コレみてもお兄ちゃんはまだ何か文句があるんですか!」
「ひぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げるヒメカ
『ぶほぉ!』
吹き出すイチロー
「ヒメカさんのこんなに幸せそうな寝顔、お兄ちゃんは見たことありますか! こんなにレアなヒメカさんの寝顔を見ることが出来たというのにまだ文句があると言うんですか!」
『いや、そもそも漆原さんの寝顔自体見たことないんだけど・・・』
「もうやめてぇぇ~!直ぐに写真消してよハルコちゃん!」
「お二人が仲直りすれば直ぐにでも消しますよ」
「ううう」
『もう仲直りしてるから』
「じゃあ仲直りしてる証拠を見せて下さい! そうですね、ハグが良いですね。ハグして見せて下さい」
ガシッ!
一切の躊躇も見せずにハグする二人。
「はぅ♡ 森山くんの匂い♡」
息ピッタリの二人のハグに納得したハルコは、ヒメカのお宝写真を消去してから部屋を去り、残された二人は何とも言えない表情で無言のまま勉強を始めた。
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