3章 臥竜鳳雛

#33 三顧の礼



 月曜日放課後


 今日は生徒会がある日。



 生徒会役員は、私を含めて6人居る。


 2学期のこの時期は様々な学校イベントが多い為、今月から繁忙期に入っている。

 本当は、学校では一緒に居られない森山くんと放課後ゆっくり過ごしたいけど、こればかりは仕方がない。


 生徒会での私の役割は、主に会計役。


 来期の部活予算の申請の整理と審査用の資料の作成

 学園祭の予算配分の資料作成

 各クラスへの備品予算支給の準備

 日常雑費の処理


 沢山の申請書や領収書を選別して、内容の精査とデータの打ち込み。

 審査しやすいように、各部活動の状況や実績などの資料に目を通して、その内容を簡単にまとめる。

 各クラス、各部に配布する為の申請書提出のお知らせの作成

 その他、etc


 生徒会活動自体は週に2日と決まっているので、どうしてもこの時期は生徒会がある日は遅くなってしまう。


 一応今日も森山くんと約束はしているけど、遅くなりそうならキャンセルの連絡をすることになっていた。


 う~

 早く終わらせて森山くんに会いたい・・・




 森山くんのことを考えながら黙々と作業をしていると、同じ2年の書記の子が生徒会長にある提案をした。


「会長、この時期は仕事が多いので、手伝ってくれる人とか増やせないですか?」


「人員の増員かぁ 確かに一人でも二人でも手伝ってくれる人が増えると助かるな」


「友達とかで手伝ってくれる人が居そうなら、連れてきてもいいですか?」



 んん!?

 今、閃いちゃったよわたし!


「一応、顧問の先生に確認してみるよ。 許可が出れば何人か期間限定の助っ人をスカウトしようか」


「あの!私、一人心当たりがあります! 早速今日にでも相談してみたいと思うんですが、良いですか?」


「漆原さんの知り合いか。 君の推薦なら間違いないだろう。 顧問の先生には今から相談してくるから、その方と話しを進めてもらっていいかな?」


「分かりました!」



 ふふふふ

 生徒会がある日でも、これで森山くんと一緒の時間が増やせるよね


 森山くんは目立つことを嫌うから自分のことを表に出さない様にしてるけど、お母さんの話からも分かるように元々は優秀な人材で能力的には問題ないはず。 むしろ生徒会に欲しいくらいの人材じゃないかと私は見ている。


 問題なのは、森山くんを説得出来るか。


 ここは、私の腕の見せ所よね。

 なんとしてでも森山くんをスカウトしてなくては!




 この日、推薦したい人と17時に約束してるからと早めに下校させて貰い、森山くんの待つ公園に急ぐ。


 公園に着くと、いつもの様に森山くんはドズルくんと走り回っていた。



「お待たせしてごめんなさい」


『いえいえ、漆原さんこそ、生徒会ご苦労様でした』


 わん!


「うふふ、ありがとうね」

「それで、来て早々なんですが今日は大事な相談があります」


『相談ですか? 大事な相談なのに、僕なんかで良いんですか?』


「はい。 森山くんじゃないとダメな相談です」


『はぁ、分かりました。 聞かせて下さい』


「うん、ありがとうね。 それで相談って言うのは、生徒会の話なんです」


『ん?生徒会? 僕、生徒会のこと何も知りませんけど・・・』


「えっとね、今、生徒会って色々な行事とか来期の予算組みとかが重なってて凄く忙しいんです。 それで期間限定で手伝ってくれる人をスカウトしようってことになってね、わたしは森山くんを推薦したいんです」


『え?僕ですか?』


「はい。 森山くんが優秀な人だというのは分かってます。 ただ表に出さないからみんな気が付いていないけど」


『そんなことは無いですよ。 僕はただのモブです』


「森山くん? 森山くんが自分をどんなに卑下しても、わたしの森山くん評価は変わりませんよ? 今の生徒会には森山くんが必要なんです」


『はぁ・・・でも、僕みたいなぼっちが生徒会に関わっているのが知れたら・・・みんなに』


「そんなこと、もうどーでもいいじゃないですか! 森山くん、自分のことぼっちぼっち言いますけど、もう私と友達になってる時点でぼっちなんかじゃないですからね! ぼっち偽装した似非ぼっちですからね! いくらぼっちのフリしても手遅れですから!」


『えぇー・・・僕、もうぼっちじゃないのか・・・』


「それに! ・・・・わたしが森山くんと・・・一緒に・・・ゴニョゴニョ」


『え?なんですか? 聞き取りにくいですよ』


「ん~~もう! 私が森山くんと一緒に生徒会やりたいんです! 少しでも長く一緒に居たいんです!」


『ええええ!?そんなにも!? ・・・分かりました、もう少し詳しく教えて頂けますか? 僕にでもお役に立てそうなら、出来る範囲で協力します』


「ほ、ほほほほホントに!?」


『はい。 武士に二言はないのですよね?』


「はい! 森山くん!ありがとー!!!」


 そう言って、思わず森山くんに抱き着いちゃった。

「はぅ♡ 森山くんの匂い♡」



 こうして森山くんをスカウトすることに成功した。





 早速、翌日のお昼休憩に顧問の先生の所に本人を連れて行って許可を貰い、次の生徒会のある木曜日から参加することになった。


 ポケモン森山くん、げっとだZE!!!









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