#18 解ってきたヒメカの外面と素顔
漆原さん親子の謝罪の場は無事に終わり、ひと安心。
何せ、学園のアイドルとあのお母さんだ。
拗れでもしたら厄介なこと極まりない。
謝罪の場では、僕は漆原さんよりもママさんの方の機嫌を損ねない様に、マンマークでご機嫌取りに終始した。
一応言っておくと、漆原家が謝罪する側で、森山家が謝罪される側ね。 それでも漆原さんのママさんの脅威を感じての対応だった。
でも実際のところは、ウチの母さんのノーテンキさに漆原さん親子もタジタジで、最後にはみんなしてニコニコの和やかなお喋り会になっていた。
それにしても感心したのは、流石漆原さん。やはり学園のアイドルであり、普段からお上品でお淑やかなお嬢様。
お寿司は中トロしか食べないスタイル。
下民の僕なんて恐れ多くて、玉子にしか手が出せなかったよ。
そんなこんなで、最後に漆原さんのママさんとも連絡先を交換して、何故かウチの母さんやハルコも漆原さんたちと交換して、お開きとなった。
と思ったら、最後の最後に漆原さんがまた何かしでかそうとしてて(おいおい今度は何しようとしてんの!)ってビビっていたら「ペルビアンジャイアントオオムカデっぽい虫が居た」とか言いだして、大混乱。
慌てて保健所に電話しようとしたら「見間違いでした!」って必死に止められ無事収束したけど、相変わらず学校以外の漆原さんはトラブルメーカーだった。
◇◆◇
翌日以降も2~3日に1度は公園で待ち合わせてお喋りを楽しみ、学校では相変わらず周りに気付かれない様なアイコンタクトやメールでの会話を続けてて、平和な学校生活に戻りつつある。
と安心したのも束の間、漆原さんが急に非常階段での僕のぼっち飯に「私も非常階段で食べたい」とか言いだして、今必死に止めている状況。
漆原さん、学校以外だとお喋り楽しいし優しいし面白いから僕としても友達になれて良かったと思えるようになってきて、でも、それでも一定の距離は保とうとしてるのにたまに漆原さんの方からグイグイ来るのが厄介なんだよな。
だって、いつもグループでお昼食べてる漆原さんが、お昼休憩に教室に居なかったら何かしらの影響をクラスに与えそうでしょ?
「ドコ行ってたの?」「誰と一緒だったの?」「もしかして、隠れて彼氏とかいるんじゃない?」とか。
そうなると、晴山くんみたいなのが「モブ山、お前なんか知ってるんじゃないの?」と言いだしたりして「そういえば、モブ山も最近お昼教室に居ないよな」とかなったりして、それで「お前隠れてコソコソなにかやってんの?」とか言いだされて、魔女裁判の始まりですわ。
いくら無実を訴えようとも、僕みたいな日陰ぼっちなんざ誰も言うこと聞いてくれず、って漆原さんと非常階段飯してたら無実では無くなるのか。
余計ダメじゃないの!
そして、そんな日の放課後、例の公園にて。
『というわけで、非常階段でのお昼ご飯ご一緒するのは、断固お断りします!』
「むう。そこを何とかお願いです! なんならお弁当は私が用意しますから!」
『いえ、そんなことして頂いたら、それこそ誰かにバレた時に、余計に罪が重くなって魔女裁判どころじゃなくなります! 因果律の呪いレベルの厄災が降りかかってきますよ!』
「え?因果律がなんです?」
『例え話です!そこはスルーしてください。 それにしてもどうして漆原さんはこうも恐ろしいことを言いだすんですか。 よく考えて下さいよ? ただでさえ学園のアイドルの漆原さんと日陰ぼっちのモブ山がお友達だなんて知られたら「モブ山のくせに生意気だ!」って周囲の神経逆撫でしてしまうのに、お昼二人っきりで食べてたなんてこと知られたら、問答無用で打首獄門ですよ! しかも漆原さんのお弁当をモブ山が食べてたとか、ホモサピエンスに生まれたこと後悔するレベルの恐怖が待ってますよ!』
「も~森山くんはすぐ大げさに言うんだから」
『いやいやいや!何言ってんの漆原さん! 君は学校じゃ人気者だから日陰ぼっちの境遇とか全然理解出来ないんだ!』
「あーもーワカリマシター、何かあったら私が森山くんの事守りますー。私のが森山くんより強いしー」
『漆原さん!本当にあなたは何も分かってない! もし学校で漆原さんが僕のことを庇ったり守ったりしたら、それこそ二人の関係は普通じゃないよ、疑って下さいねって言ってるようなものでしょ! やっぱりママさんが言ってた通りだ!漆原さん、君はポンコツすぎるよ!』
「はい? 今、私の事、ポンコツって言いました?」
しまった
言い過ぎた
漆原さんの目つきが変わった
『いえ・・・その・・・ごめんなさい・・・』
「何がごめんなさいですか? 今、何について謝ってますか?」
『その・・・ポンコツって言った件に関してです・・・』
「それだけですか?」
『あの・・・その・・・はい』
失敗した
久しぶり出来た友達なのに、つい感情的になってしまった
「はぁ・・・じゃあ明日のお昼は非常階段ってことで良いですよね?」
『はぁ?なんでそーなるの』
と言った途端、漆原さんの目つきがギロリと更に鋭くなった。
『いえ・・・なんでもありません・・・・』
「じゃあ、明日は私がお弁当を用意しますね♪ 楽しみにしてて下さいね☆」
『・・・・はい』
最近判ったこと。
漆原さんは、普段の学校と、学校の外で僕と居る時とで態度も口調も全然違う。
あくまで僕視点だけども。
普段の学校での漆原さん
・真面目で優等生でしっかり者。
・上品でお淑やか。怒ったり不機嫌な姿を見たことが無い。
・生徒会役員などもやってて頼もしい。
・口調はいつも敬語で丁寧。
二人になった時の漆原さん
・我儘言いだしたり、甘えだしたり、結構面倒臭い。
・テレたり、ポンコツになったり、調子に乗ったり、目まぐるしく変り頼りにならない。
・たまに怒る。怒ると怖い。
・口調は敬語だったり敬語じゃなかったり。
あ、ママさんが一緒でもこんな感じだった。
ということは、家で過ごすプライベートな時間と、僕と二人で居る時間は、漆原さんの中では同じようにリラックス出来る時間と考えられるわけで、それくらい友達として気を許すようになったといえる良好な関係が出来つつあるってことなんだろう。
でも油断は禁物。
いつまた怒らせたりウザいって思われるか分からないしね。
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