#10 下駄箱の手紙は危険がいっぱい






 漆原さん・・・僕は今朝キチンと謝罪したはずだ。

 まだ僕に不満でもあるのだろうか・・・


 兎に角手紙を読んでみよう



 漆原さんからの手紙は、僕の予想を大きく外れた内容だった。



 僕に対する謝罪と感謝。

 子供のころからカラテを習っていて腕に自信があったから、僕では無く不審者を撃退するつもりだったこと。

 送って貰ったのに怪我の確認や治療を怠ってそのまま帰してしまったことなどの後悔。

 改めて謝罪とお礼をしたいから、連絡先と住所を教えて欲しいこと。

 そして、漆原さんのことを避けずに、友達になって欲しいこと。

 最後に漆原さんのスマホの電話番号とチャットアプリのIDが書かれていた。



 手紙を読んでの感想は


 下駄箱の手紙は、やはり爆弾だった。



 ”僕に対する謝罪と感謝”

 これは昨日の状況からすれば、そう感じてもらえるのは良かったと思える。


 ”カラテを習っていたこと”

 自分で腕に自信があると言うくらいだから、達人の域なんだろう。なるほど、僕のダメージの大きさも頷ける。


 ”怪我の確認や治療を怠ったこと”

 コレは逆にそんなことされたら申し訳なさ過ぎて困るので、気にしないでほしい


 そして問題なのは


 ”連絡先と住所を教えて欲しい”と、”漆原さんを避けないで友達になる”


 何を言い出してんだ、この人は!

 更に僕のことを追い詰めようと言うのか!?


 今朝ちょっと会話しただけで、クラスにどれだけの影響を与えたのか分かっているのか!?

 それが、正式に友達になんかになってしまった日には、どれほどの妬み嫉みヤッカミが待っていることやら。



 不味い

 これは冗談抜きに不味い事態だ。


 あ、でもコレって本当に漆原さんが書いたとは限らないよな。

 いたずらの可能性も・・・・







 ムリだ、その可能性は限りなく低い。

 だって当事者しか知らない昨日の事件のことが詳しく書かれているし。


 やはり本人に間違いない。

 となると、あとは直接本人にお断りの釈明をするしかないか。



 ココに電話番号とチャットアプリのIDが書いてある。

 チャットアプリは僕には縁が無いのでスマホに入れていない。

 あとは通話、か。


 ここ3年近く、学校関係者と通話したことは無い。

 最後に通話したのも、確か固定電話でカスミに今までのお節介を謝罪し決別した時だ。


 しかも今回は友達ですらない学園のアイドルだ。

 ハードルが高すぎる

 しかしココではっきり釈明しなくては、僕の厄災はきっと明日以降も続くだろう。



 スマホを握る手が震える


 番号をタップしようとして、思い留まる。


 待て!

 話す内容考えずにかけてしまうと、ドツボにハマるぞ!




 まずは内容を考えねば。


 ・手紙へのお礼と、昨日のお節介の謝罪


 ・今日の天気

 いや、もう夜だし、天気の話をしてどうするんだ!


 う~何を話せばいいんだ・・・


 あ、そうだ、本来の目的は、

 ・友達になることのお断りする釈明、だ


 なんて言おうか

 どう言えば許してくれるんだろう

 さっぱり分かんないぞ

 友達になるの断るシュチエーションって普通無いしね


 ん?

 ちょっと待てよ?

 コレ、友達になるのを断ると、もっと不味い展開が待っていないか?


 学園のアイドルとも呼べる漆原さんを袖にする

 しかも日陰ぼっちの森山イチローが

 只でさえモブ山って呼ばれてるのに


 その後の周囲の反応は・・・想像するだけでも恐ろしい!


 なんてこった

 逃げることすら出来ないとは


 正に八方塞がりとはこのことだ。




 こうなったら仕方ない

 とりあえず友達になることを了承して、後は逃げよう

 うん、コレしかない


 そうと決まれば、早速電話だ。

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