#06 ヒメカさん、ご立腹
森山くんに怪我をさせてしまった翌日
森山くんは無事に学校にこれるだろうか?
実は怪我が酷くて休んだりしないだろうか?
そんな不安に押しつぶされそうになりながら、朝の教室でそわそわしていると、森山くんが登校してきた。
まずは安心したけれども、怪我の様子はどうか分からない為、遠くの席から目を凝らして様子を伺う。
腫れたりアザがあるようには見えない。
森山くん自身の様子も、怪我があるような動きは見えない。
昨日、森山くんが言っていた様に本当に平気だったんだろうか。
でも、私の蹴りはモロに入っていた。
あの蹴りで軽いダメージで済むとはとても考えられない。
やっぱり直接確認しよう。
そしてキチンと謝って、あと助けようとしてくれたことにも感謝の言葉を伝えよう。
意を決して席を立ち、森山くんの席に向かって歩き出す。
物凄い緊張感
試合でもここまで緊張したことは無いかもしれない。
森山くんの傍に立つ。
でも、森山くんはスマホに夢中で気が付いてくれない。
昨日、私が蹴りを入れた左頬を見つめる。
腫れてはいないけど、やっぱり赤くなっている。
勇気を出して声をかける。
「森山くん、怪我は大丈夫ですか?」
でも緊張していたせいか、声を掛けながら無意識に森山くんの左頬に手を伸ばしてしまった。
私がいきなり声を掛けたせいで森山くんはビックリしてしまい、『どわっ!?』と声を出しながらイスごと倒れてしまった!
しまった!
またやってしまった!!!
もうソコからはテンパってしまい、気づいた時には森山くんは教室から飛び出して居なくなった後だった。
しかも、森山くんは教室から飛び出す直前、私に頭を下げていた。
謝らないといけないのは私なのに、なんで森山くんに謝らせているのよ、私は・・・
森山くんを追いかける勇気が既に無くなってしまった私は、森山くんが教室の戻ってくるのを待つしかなく、でも森山くんはHRが始まる直前に戻って来たため、謝罪するタイミングを逃してしまった。
HRが終わり、森山くんに視線を向けると、クラスメイトの晴山くんが森山くんに話しかけていた。
珍しい組み合わせだ
何を話しているんだろう
昨日のコトを話しているんだろうか・・・自業自得とは言え、気になる・・・
私は立ち上がると素早く廊下に回って、後ろの入り口から教室に戻り、二人に気づかれないように二人の会話が聞こえる距離まで近づいた。
「モブ山く~ん、ヒメカさんに話しかけられるなんて、ホントは何かあったんでしょー? 隠さないで教えてよ~」
『いえ、本当に大した話ではありませんよ。そもそも僕なんてその辺の石ころと同じですから、漆原さんにとってはちょっと躓いただけの話です』
回し蹴りを顔面に受けて失神までしたのに、大したことないって・・・
しかも、必要以上に自分のことを卑下しているし。
1限目の授業が始まってしまい、それ以上の会話を聞くことが出来なかった。
そして、それ以降休憩の度に森山くんに話しかけようとするけど、森山くんは逃げるように教室から出て行ってしまい、毎回チャイムが鳴るまで教室には戻って来なくて、全く話しかけることが出来なかった。
更にお昼休憩なら流石に教室で食べると思ったけど、気づいたときには森山くんは教室から姿を消していた。
失意の中、友達とお昼のお弁当を食べながらも、森山くんにどうやって謝ろうかと悩んでいると、同じグループのミカちゃんとサヤちゃんに森山くんのことを聞かれた。
「ねね、ヒメカちゃん、森山くんと何かあったの?」
「それ私も気になってた! なんか朝話しかけてたし、そのあともヒメカちゃん、ずっと森山くんのこと気にしてたよね?」
「え!?そんなこと無いよ・・・」
「うそだ~! あ、でもヒメカちゃんと森山くんって、なんか凄い組み合わせだよね?」
「そうだねー、森山くんってさ、ぶっちゃけいつも一人で友達居ないっぽいし? 地味だしなんか冴えない感じだし?」
「そうそう! 晴山くんとか”モブ山”って呼んでるんだよ? ウケるよね~」
二人が森山くんのことを馬鹿にしているのを聞いていると、無性に腹が立ってきた。
「そんなこと無いよ! 森山くんは強くて優しくて、凄い気遣いが出来る人なんだよ! いくらミカちゃんとサヤちゃんでも森山くんのこと馬鹿にするの、許さないよ!」
「あ!ごめん・・・そんなつもりじゃ・・・」
は!っと気が付いた時には手遅れで、強い口調で森山くんを庇う発言する私を、教室中の人たちが注目していた。
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