第25話 代価に与えられしは くちづけ一つ(日本戦国時代編)その1

そこは人の命が儚い日本の戦乱の時代

やがて 覇者なる者が現れて ようやく平和をもたらそうとした


そして雪の舞う季節に覇者たる信長公に


異国のバテレテン パーデレ(神父達)や商人の一行がたち寄りしは

信長公の支配下にありし小国の領主の舘


季節は年の瀬も近く冬の時期  南蛮ならまもなくクリスマスであった


そして舘から聞こえるは

まだ聞いた事もない楽器にて奏でられたる異国の妙(たえ)なる音楽


夢の中の・・天上にて迦陵頻迦(かりょうびんが)や乾闥婆(けんだつば)


奏でる音楽のような夢心地 すぐそばには吉祥天 弁財天がいるがごとく


異国のまだ幼い面影の残る少女が奏でるリュートと呼ばれた楽器

奏でる少女の指先が止まる


人々はうっとりして一瞬、静まりかえる


やがて 拍手の嵐 


「いやはや素晴らしいものだ」

  

一行の異国の商人の一人が口を開く


「この可愛い演奏者は我が姪っ子」


「同じ商人である弟の娘

南の国のマニラで生まれ 私と同じポルトガルの多くの同胞が定住してくらす

マカオで育ちました者


来年の春には 海を越えて本国ポルトガルに

戻る事になっておりますが


美しい東洋を離れる前に この桜の美しい国を見せたく思いまして


信長様は少女の演奏の腕枕をパーデレさま達より伝え聞いて

事の他 興味を示されて城にて演奏を致します事になりました」


少女は軽く会釈をして席を立ち


別部屋へ領主の息子の一人が

彼は少女より少し歳上の少年 


そっと席を立ち、少女の後を追いかける

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