第24話 ある騎士の物語 その2 遠い愛しい人を想う 

「私の作りましたシュートレインを食べていただきたいです! 」


「すまないマリアンヌ

私は今晩の船でマルタ島に戻らねば・・ 」


「そんな」 悲しそうに表情を曇らす少女


「家まで送ろうか・・

途中の広場のクリスマスマーケットで買い物をするのかい? 」


「えぇ!少しだけ クリスマスツリーに付ける丸いお菓子を 悪戯な飼い犬に食べられてしまったから・・ お店で買う事にしたの 」


「ではクリスマスの祝いに

髪飾りとドレス用の生地を姫には差し上げようか」


「おじさま!本当に!」



可愛らしいという言葉が似合う 柔らかな色とりどりな色彩の街並の広場に雪が舞う

綺麗に飾ってある小さな露天の店がひしめきあう・・。


街に灯かりがともされ

クリスマス・マーケットの店の灯かりも色も鮮やかに飾られて

祭の宴  人達と子供達の笑う声がしている

讃美歌が何処からともなく聞こえる あれは街行く者達に向けて舞台で謡う声か


雪の・・

灰色をおびた暗い空の下

ちょっとした夢のような綺麗な風景


鮮やかな色の切り彫りの細工の蝋燭(ろうそく)にこれまた美しい細工の蝋燭入れを

手に鳥 、これも良いかな などと 呟く 小さな宝石の首飾り


それから

「ああ、オルゴール これも良い 」


「あちらの店のお菓子、レープクーヘンに林檎菓子 

それに香辛料入りの温めたぶどうジュースか 私はホットワインを頂くかな」

 

「林檎の酒も悪くない 他には 姫さま 欲しいものは?」可愛い姪の姫に微笑する


「まあ、叔父様」「ふふっ 可愛い姫さま」


可愛らしい少女の為のささやかな幾つかの贈り物


「おじさま!そんなに持ちきれないわ」


しばらく お会い出来ない 麗しいお姫様への貢ぎ物・・

何卒 納め下さいませ


ぎょうぎょうしく

騎士の仕草をして  それからウインク(^_-)

愉しげ笑う


家の扉まで送り


「また、お会い出来る日まで・・姫様・・」


「おじさま・・? 」



ゆっくりと思う

これまでの楽しい時間  密やかな胸の痛む恋の記憶


マルタ島での戦いは激しいものになるだろう


以前の闘いで 全滅のうきめにあった騎士の部隊もあったという




「手紙をくれると嬉しいな  私のマリアンヌ姫 」


心の中で呟く


幸薄かった・・あの人の分も 神の祝福と 沢山の幸運

幸せがある事を・・私の・・



手を振り

無邪気に微笑む可愛らしい少女に 手を振る


クリスマスの夜の空

雪が 静かに降りしきる


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