第1話 ぼくはとうめいにんげん。
中学校でも僕は宇宙人だった。皆の言う『好き』は所謂"Love"というもので僕の言う『好き』とは違うのだと知った。
更に追加オプションで『異性と急接近!="Love"』というものが生まれた。
これがまた厄介で、結果的にぼくは仲がいい友達の大半を失うことになってしまった。
いや、失ってはいないのだけれど、小学校時代のように家に遊びに行って一緒にゲームをしたり、誰かと2人で映画を観に行ったりということが全く無くなってしまった。
学校でも男子、女子ではっきりと区別され、ちょっと前まで男女関係なくドッジボールなどは手加減無しの真剣勝負だったというのに、「女子を当てるなんて最低」という声が多く挙がり、結局男子が手加減をする羽目になった。
(でも、ドッジボールって、当てるものでは……とか思ったけれど言わないようにした)
部活はバスケ部だったけれど、絵を見るのも描くのも好きだったから、時々部活をサボって美術部を覗きに行った。
そこには、『先生』(生徒だけれど、とても素敵な絵を描くので『先生』と呼んでいる)がいて、いつもとても美しい絵が描かれていた。
「先生は凄いなぁ……多才で羨ましいです」
そう言うと先生は笑って言った。
「才能ある人はね、試合終了のブザーが鳴ったら立ち止まっちゃうんだよ。努力家の君はブザーが鳴った後の延長戦も沢山頑張れるんだろうね」
今考えれば、暗に『私は天才なんです』と言われた気がしなくもないが、その時はただ美しいと思った。
美しい絵を描く人は心根まで美しいのだと。
「先生は、凄いです」
「ありがとう」
特に他意はなかったし、純粋な尊敬の気持ちから出た言葉だった。
けれど、このやりとりを見た通りすがりのクラスメイトが『異性と急接近!="Love"』の方程式を駆使し、僕と先生との間柄を邪推した。
「みずきの好きな人はどうせ、あの人でしょ?」
そう言われることがぐんと増えた。『好き』とは違うと思っていた。恋愛としてでも友達としてでも『好き』ではないと。
尊敬していた。ただ、それだけだった。
でも、どれだけ訴えても僕の話は聞き入れてもらえなかった。
僕は透明人間だった。
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