第4話

スポーツカーでは無く白い軽ワゴンに乗り込み、さっき来た道を逆戻りしながらやがて辿り着いた湖岸の派出所前に停車すると、


「お前はそこで待ってろ。ナシ付けてくる」


康明叔父さんは車を降りて、数人の警察官や十人ぐらいの猟友会のメンバーと思われる集まりの方へと足早に向かって行った。


叔父さんが軽く手を挙げ何事か伝えながらこちらを指差すと、全員の目が一斉に僕に向かい思わず首をすくめたが、皆は困ったような仕方無いというような表情を浮かべていて、一部には大声で笑い出す者もいた。


警察官やけっこう真面目そうな年配の人もいっぱいいる中で、金髪にサングラスといういかにも今時のワルっぽい康明叔父さんはかなりの異彩を放っていたが、それでもけっこう人望があるのかも知れないな、などと思っていると叔父さんが戻ってきた。


ワゴンのバックドアを開くと、


「車から絶対ぜってぇ降りねぇなら一緒に行ってもいいってよ」


言いながら叔父さんはがちゃがちゃと荷物を漁り始めた。


「あぁ……叔父さんに着いて歩いちゃ駄目なんだね……」


「俺はそれでも構わねぇんだけど、まぁ色々めんどくせぇオトナの事情があんだよ」


「そっか……。その派手なライフジャケットもオトナの事情?目立っちゃってクマが逃げそうだけど」


叔父さんのセンスからすればおおよそ日常で身にまとうことなど無さそうな蛍光オレンジのベストを、黒いタンクトップの上に装着している姿に尋ねる。


「ま、獲物がどうっつーより猟師同士が間違って撃ち合わねぇようにだな。こっちが茂みの中とかでがさがさ言っただけでいきなり撃ってこられるのとかマジ有り得ねぇだろ?こんだけ派手なら遠くからでも視認できるっつーこった」


猟銃をあちこち開いたり外したりと動作を確認しながら答える叔父さんだったが、


「よし、行くか。車の中からじゃクマも撃つとこも見えねぇかも知んねぇけど、まぁ上手く誘導できたら車の前に追い込んでお前の目の前で仕留めてやるよ」


手入れを終えた、まだ弾の入っていない猟銃の引き金をかちゃりと引き、小さく笑った。





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