30、冒険者ギルド

 レーナに手を引かれて中に入った瞬間、かなり賑わっている。

 少しでも良い依頼を受けるため冒険者達は熾烈な争いを繰り広げていた。

 この光景は今も五百年前も変わらないなと、懐かしく思ってい立ち止まっていると、


「サージ様何をしているのですか! 私達が用のあるのはあそこではありませんよ」


 レーナに引っ張られて俺達は受付へとやって来た。


「ようこそ冒険者ギルドサーリス支部へ、今日は何の御用でしょうか?」

「冒険者登録に来ました」

「かしこまりました。その制服は、勇者学院の生徒さんですね」

「はい」

「学生証はお持ちでしょうか?」


 俺達は受付のお姉さんに言われるまま学生証を出す。


「確認いたしました。では冒険者カードを発行いたしますのでしばらくお待ちください」


 受付で二十分程待っていると、


「冒険者カード発行をお待ちのサージ=ルート君、レーラ=アルベノクさん」


 受付の女性に名前が呼ばれたために受付に行く。


「こちらがお二人の冒険者カードとなります」


 俺達は受付のお姉さんからカードを受け取った。

 隣にいるレーナはカードを持ち上げて目を輝かせている。

 そんなに嬉しかったのか。


「冒険者カードですが、基本的には再発行は出来ませんのでなくさないようにお気を付けください。もしも失くしてしまった場合は、かなり面倒な手続きが必要になります」

「分かりました」

「それと、冒険者カードにはいくつか機能がございます。その一つが倒したモンスターを記録してくれる機能です。いつ、どこでモンスターを倒したのかが記録されるようになっています」

「どうやって記録を取っているのですか?」

「冒険者カードには周りの空気に馴染んでいる魔力を微量に吸収する機能があります。その機能を利用して倒したモンスターが魔力となり空気に溶け込む前に吸収しているのです。そうすることで倒したモンスターを記録しております。それともう一つ、この魔力を吸収する機能を使って地図を見る事が出来るようになっております」


 それはかなり便利な機能じゃないか。

 昔はそんな機能なんてないただのカードだったし、ちゃんとした紙媒体の地図なんかもなくて見地らぬ土地で遭難する人もかなりいたくらいだ。


「この地図の機能ですが、世界各地の魔力の質とは場所によって微妙に違っております。その違いがこの冒険者カードには記録されているわけです。そして、カードが周りの空気を吸った時、その魔力の質と、登録された魔力の質が同じ場所を自動で感知してくれているのです」

「そうなんですね。凄く便利で助かる機能ですね」

「はい。それから冒険者になられた皆様には、ギルド内にある図書館を自由に使っていただけますので、依頼に行かれる前にお使いくださいませ」


 それから、冒険者ギルド内の説明に、使える機能など説明を受けた。

 俺達はというよりは、レーナは冒険者カードを貰ったことでテンションが上がっていて受付のお姉さんの話を全然聞いていない。

 そのため、俺がしっかり聞いておいて後で教えてやらないと思いながら聞いていた。

 話を聞いていると、やはり五百年前と変わっている所も多々あり、かなり助かった。


 一通り話を聞き終わったところで、


「以上でご説明は終了ですが、何かご質問はありますか?」

「はい! 依頼は今日から受けれるのでしょうか?」

「大丈夫ですよ。ただ、既にめぼしい依頼はなくなっておりますがよろしかったですか?」

「はい、大丈夫です。サージ様行きましょう!」


 俺はレーナに引っ張られる中、受付のお姉さんに一礼して依頼が張られている掲示板へと向かった。

 掲示板には依頼の書かれた紙が貼られているが、既に目ぼしいものは取られており残っているのは薬草採取や討伐系の依頼で報酬が少ない物くらいであった。


「レーナさん、めぼしい依頼はありませんし明日出直しませんか?」

「何を言っているのですかサージ様! 依頼ならほらここにあるではありませんか!」


 レーナは薬草採取の依頼を既に取っていた。


「ですがそれは」

「依頼は依頼です」


 そう言ってレーナは依頼書を受付へと持っていき依頼を受けた。

 今回レーナの受けた依頼は、王都近くにある森での薬草採取の依頼である。

 依頼のランクはFランクで俺達の冒険者ランクもFではあるが、それは冒険者になったばかりだから仕方がない。

 それに今回俺達が冒険者になったのは、レーナにモンスターとの戦闘をしてもらうためであるために、薬草採取だと少し役不足であるのだが、まあ最初の冒険者の仕事としては良いのかもしれないか。

 

 冒険者は自分のランクより下の依頼はどれでも受けれるが、上の依頼に関しては二つ上のランクの依頼まで受ける事が出来る。

 そのため今の俺達だとDランクの依頼まで受ける事が出来るのである。

 Dランクになると、低ランクではあるがモンスターの討伐依頼がある。

 そのため、出直して明日その依頼を受けた方がいいかとも思ったのだが、見守っておこうと思った。


「サージ様、依頼受理されました」

「そうか、じゃあいこうか」


 俺達は、冒険者ギルドを出て、森へと向かうのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る