29、ハクアからの提案
ハクア、学院長との模擬戦から一週間が過ぎた。
あれ以来ハクアは放課後に俺のことをよく呼び出すようになった。
レーナもそんな俺についてきた。
そこでは毎日のようにハクアと闘技場で模擬戦をしたり、レーナに剣を教えたりとなかなか忙しい毎日を送っていた。
そのおかげか、レーナはかなり力をつけている。
その上、俺とハクアとの戦いを見て、自分ならどうするかと考えている内に、対人戦に関してかなり上達ぶり。
流石の才能と言わざる負えない。
そんなある日の放課後、
「レーナ君もそろそろ、モンスターとの戦闘を経験してみるのもいいんじゃないかな?」
ハクアから提案された。
この一週間でハクアはレーナの姉弟子としてよくやってくれている。
俺が教えられないことや知らないことなどを教えてくれたりと本当の姉妹のような二人。
ハクアはエルフ族であるために、見た目はまだ二十代に見えるために、俺以外の者が見てもそう見えるだろう。
ただ、ハクアは見た目的には二十代に見えるが、実際には五百歳を超えている。
そのことを三日前に言ってしまって激怒させてしまった。
昔、勇者や聖女から「女性の年齢を聞いたり、本当の年齢を言ってはいけません」と言われたことがある。
何故かと聞いたこともあったが、勇者から「お前はしれだからダメなんだ」と言われてしまった。
そういえばあの時も聖女であるミーナ=シュクベルの年齢をつい口を滑らせて言ってしまった時だった。
「モ、モンスターですか! ですが私は学生の身ですし、冒険者でもありませんよ。ハクア様」
「大丈夫だよ。この学院では学生が冒険者になることを推奨しているからね」
「そうなんですか!?」
「そうですよ。学生証にも書いてありますよ。もともとこの学院は将来の勇者や賢者様を育てる目的で私が造りました。学院の授業で力をつけてもらうのは勿論ですが、それ以上に実践を積んでもらいたいのです。その為に冒険者になることを認めています」
「でもなぜ冒険者なのですか?」
「それは、レーナ君もこの一週間で気づいているのではないですか?」
「え! う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん」
胸の前で腕を組み頭を捻っている。
そんなレーナの隣で紅茶を飲んでいる俺はハクアが何を言いたいのか気づいていた。
「それは、実践ですよ」
「実践ですか?」
「そうです。レーナ君もこの一週間私や、師匠と模擬戦をしましたよね」
「はい」
「その中で気づくことは多くなかったですか」
ハクアからそういわれてまた考え込むレーナ。
それから十分してハッとした顔をした。
「確かに、魔力の効率的な使い方や、対人戦で意識しないといけないこととか、色々なことを学べました」
「そうね。これは実際に戦ってみないと分からないことも多かったと思うわ。一回の実践は、何十回の鍛錬にも勝るのよ。だから私は、意欲のある生徒には冒険者としてモンスター達と戦って欲しいの」
「分かりました。流石は勇者学院の学院長ですね」
レーナはハクアの話を納得した。
それから俺達は、休日である明日冒険者ギルドに行くことを決めて寮へと戻っていった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、俺とレーナは朝一で冒険者ギルドへ向かった。
別に朝一にしなくても昼からでも良かったのだが、レーナが早くいきたいからと言ってきかなかった。
俺は正直少し気が乗らなかった。
元々俺も冒険者になろうと考えていたため、今日冒険者ギルドへと行こうと決めていた。
ただ、朝一はやめておこうと考えていたのだ。
その理由は、朝一が一番混んでいるからである。
五百年前、まだ勇者パーティーに所属せずに普通の冒険者だったころ、俺は毎日のように朝一で冒険者ギルドへと行っていた。
朝一は、他の冒険者も多く来て良い依頼を取るための戦争となるのだ。
あの頃は仕方がなかったが、進んでそんな中に入りたくはないが、レーナはそんなことを知るはずもないし、そんな冒険者の闇的な所を最初から知ってほしくない。
そのためしょうがなくレーナに付き合って朝一の冒険者ギルドへ向かうことになった。
「サージ様、楽しみですね」
「そうか?」
「はい! だって憧れの冒険者ですよ! それにサージ様が隣にいてくださるのでとても心強いです!」
「そ、それはよかった」
流石にこんなに楽しみにしているレーナに人が多いから嫌だとは言えない。
俺は少しため息をつきながら王都の街を歩いていた。
隣ではウキウキなレーナがものすごくいい笑顔で歩いている。
こんな笑顔、入学試験の合格発表の時ぶりに見る。
そして、俺達は冒険者ギルドへと到着した。
「サージ様! 冒険者ギルド! 冒険者ギルドですよ!」
「前に、レイクと一緒に来ただろう」
「そうですが、今回は実際に中に入れるのですよ」
レーナのテンションがより上がる。
俺はというと、冒険者ギルドを出入りする人達を見てぐっと疲れてきた。
そんな中、俺はある少女に目が留まる。
勇者学院の制服を着た少女。
レーナとは違い短い海のような青い髪、遠くからでは分からなかったが身長は俺とそう変わらないだろう。
顔は良く見えなかったが、昔どこかであったような感じがした。
そんな少女に目を奪われていると、
「サージ様行きますよ! 早くしないと時間が無くなってしまいます」
レーナに強引に手を引かれて冒険者ギルドの中へと入って行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます