28、リーラ=シュクベル
私、リーラ=シュクベルは親兄妹から邪魔者扱いをされています。
シュクベル公爵家は特殊な家系で、先祖であり、勇者パーティーの一員でもあった聖女様が国王より公爵の爵位を授かったことで貴族へなった家系なのです。
聖女様はその能力で多くの人を救うために、王都に教会を建てて訪れる人達を回復魔法で癒していました。
そして今では教会は大聖堂になり、他の町や村にも教会があり、シュクベル家がその全てを統括しています。
そんな私の家は、先祖である聖女様の血を継いでいることもあり、皆回復魔法と付与魔法を得意としています。
ケガ人や病人を回復魔法で癒し、新たな魔道具を制作するのシュクベル家の役目。
そして、シュクベル家のみが使える魔法が存在している。
私の姉二人はこの学院を卒業すると同時にその魔法を習得しました。
私の目標はそんな姉達を超える事であり、家族に私のことを認めさせることなのです。
そのためにはこの学院でトップを取ることが一番の近道なんだけど、私にそれが出来るのか正直不安でしかたがありません。
魔力には自信がありますし、魔法もそこそこ使えます。
ただ、私は人を癒すことが苦手なのです。
そのことで、家では出来損ないと、邪魔者扱いされていいました。
でも、そんな私にも特技があります。
その特技を生かせれば、この学院でも大丈夫だと入学前は思っていたのですが、それは思い込みだったと思い知らされました。
周りの噂で聞いた話では、Sランク冒険者間近といわれているレリックに勝った新入生がいるとらしいのです。、
そんな凄い子が同い年にいる。
そのことが私の自信を奪っていきました。
失った自信を取り戻し、自身の力を上げるために私は冒険者の仕事を始めました。
勇者学院では、放課後と休日に冒険者者の仕事をすることが認められています。
それは学院長の意向で、実践に勝物はない。
ということで、冒険者業が認められているのです。
「今日の依頼はこれか」
私は冒険者ギルドで受けた依頼の紙を見ていました。
今回受けたのはDランクの討伐依頼で、ダイアウルフの討伐。
王都近くの森で数匹のダイアウルフが確認されていて、森に仕事に行った人達に被害が出ているということで依頼が出されたそうです。
ダイアウルフとは、大きな牙を持っていることが特徴的で、一度嚙まれるとただではすまないそうですが、動き自体は凄く鈍く、オオカミがモンスター化した中では一番弱いと言われています。
私でも冷静に立ち回れば倒せないこともないはずだと思いこの依頼を受けました。
数自体も五匹ほどであまり多くないので心配はいらないと思っています。
「今日はしっかりとしないとですね。初めての討伐依頼なんですから」
私は気合を入れながら森を進んでいきます。
そして、少し開けた場所に出たとき、ダイアウルフ達と遭遇しました。
ギルドにあったモンスター図鑑と同じ姿のモンスター。
後ろ脚が短く、口に生えている牙がものすごく大きい。
それに二メートル程あるからだはかなり大きく感じます。
私は、思わず一歩後ずさってしまいました。
怯えていてはダメだと自分に言い聞かせて、私は一歩前に踏み出します。
私に気づいたダイアウルフ達はこちらに振り向いてきました。
「やってやります。私だって戦えるのです」
入学試験の日、私は試験官に負けました。
ですが、試験官の人からは、「この学院での君の成長を楽しみにしているぞ。また機会があったら戦おう」と言われました。
その言葉は私にとってはとても嬉しく、認められた気持ちになりました。
だから、私はダイアウルフになんて負けない。
私は魔法を使いダイアウルフに向かって行きました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
少し時間もかかってしまったけど、無事ダイアウルフの討伐完了。
後は、ダイアウルフが落とした魔力結晶とドロップ品を回収して冒険者ギルドに戻れば依頼は完了になります。
「少しひやひやする場面もあったけど、何とか無事に勝ててよかった」
少し左手と足にけがをしてしまいました。
かすり傷程度ですんだのですが、それでも危ない場面は多々あり反省する所ばかりです。
もっともっといろいろな経験を積んで、実力をつけたいと思いました。
ですが今日は、無事に依頼を終えたことを喜ぼうと思っています。
ずっと暗いままでもよくないし、素直に自分を褒めてあげるのも必要だからです。
そんな少しテンションの上がり、ルンルン気分で魔力結晶とドロップ品の回収を行っている所に最悪のモンスターが現れました。
「どうして、どうしてこんなモンスターがここに現れるの」
私は驚きのあまり腰が抜けてしまい立ち上がれなくなってしまいました。
私の目の前に現れたのは、オオカミ型のモンスターの中でも上位ランクに位置しているタイガーウルフが現れたのです。
ダイアウルフの二倍以上の大きさで、その手にある爪は人など簡単に切り裂いてしまうほどの殺傷性があります。
私は、もうダメだとあきらめるしかないと思いました。
目には大量の涙が浮かんでいて、立ち上がれない。
こんな所で夢が潰えてしまうと考えた私は、
「誰か! 誰か助けてー!」
大声で叫んでいました。
誰も助けに来てくれるはずがないのに。
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