26、学院長との模擬戦 2
俺は剣をしまい集中力を上げる。
「雷龍」
雷が龍の形を作り出す。
声は出しているわけではないが、その迫力はいつ見ても凄い。
雷龍はハクア目がけて向かって行く。
「こ、これは師匠が一度だけ見せてくれた雷龍、雷の上級魔法ですか。流石です。ですが私も負けてはいられません」
ハクアはアースランパートを発動、土でできた城壁を作り出す。
魔力の練度はかなりの物で、なかなか堅そうだ。
それに魔法属性の相性も俺の方が悪い。
「私だってやれば出来ます。私の憧れた魔法、この魔法を打ち破って認めさせてやりますよ師匠」
ハクアの気持ちの籠った魔法。
「それを打ち破ってこそだな。それにまだ弟子に負けてはいられない」
俺は最初の使った雷竜、それを改めて発動。
新たな雷の龍が二体現れて合計三体となる。
龍たちは息を合わせたかのようにハクアに向かって行く。
自分の魔法に自身を持つハクアは、受けて立つ覚悟でいる。
アースランパートと俺の三体の雷龍がぶつかると、ものすごい音が闘技場内に響く。
その音のびっくりしたのか観客席にいるレーナが尻もちをついていた。
押し負けたのはハクアのアースランパートであった。
俺の雷龍は威力を少し落としながらもハクアに向かって行く。
それに対して新たなにアースランパートを発動、その城壁で完全に防いで見せた。
「俺の雷龍を防いだな」
「はい! 今度は私の全力をぶつけます」
「やってみな」
ハクアは、水の神級魔法、水龍神を発動。
水の巨大な牙を持つ龍が俺へと襲い掛かってくる。
神級魔法を使える者はこの世界、現在と未来を合わせても十人もいるかいないだろう。
そんな魔法の内の一つが今俺に向かって来ている。
「五百年も経てば白い本の持ち主でもこの領域に到達できるのんだな。俺の考えが間違えじゃなかったことを証明してくれたんだな。なら、俺も全力を出さないといけないな」
確かにここまで全力を出していなかったわけではない。
ただ、魔力をセーブして今の魔力量でも長期戦を戦えるように制御していた。
そんなことをしていたらハクアに失礼だ。
俺は、本に掛けていた幻影魔法を解除。
幻影魔法を使っていた魔力をも防御に回す。
神級魔法を防ぐにはこちらも神級魔法を使って防ぐしかない。
俺の本の本来の色が出ると、
「サージ様! その色って」
俺の本の色に反応したレーナ。
闘技場内に響くくらいの大声を出す。
レーナへのフォローは後回しにして今は目の前に迫っている水龍神に集中。
俺がハクアの魔法に対抗するために発動したのは雷の神級魔法、雷龍神。
先ほど使った雷龍の上位互換の魔法。
水に対する相性の良さからの選択で、ハクアには一度として見せたことのない魔法。
この魔法を使うのは魔人王討伐戦以来である。
俺の雷龍神と、ハクアの水龍神がぶつかり合う。
どちらも引かない攻防、最上級の魔法のぶつかり合いは闘技場内にも影響を与える。
壁にはひびが入り、地面には亀裂が入る。
ものすごい風が起こり始める。
俺とハクアは最上級の魔法のぶつかり合いにも慣れているが、観客席で見ているレーナは例外だ。
「このままではまずいな」
戦いが長引けば俺にも不利なるし、レーナにも危険が及ぶ。
ハクアは周りが見えない様子だし。
しょうがないかと、俺は残りの魔力を全て使い、火の神級魔法を発動する。
転生前の自分と比べると比較にならない程威力は落ちているが問題ないだろう。
二体の龍神によって水龍神を消滅させる。
水龍神が消えたことで新たな魔法を発動しようとするが、そんな時間を与えない。
俺の龍神もハクアの水龍神を消滅させると同時に消滅した。
ここまで予想通り。
既に準備を終えていたサンダーショットを発動、ハクアに向けて放つ。
全魔法の中で最も速度のある魔法を放つ。
ハクアは一瞬判断に遅れて対抗魔法を放てずにもろにくらってしまった。
「これで終了だな」
「サージ様が、あの学院長に勝ったのですか?」
「ハハ、ハハハハハハハ、負けた。私が負けた。この五百年で初めてです。でも何でしょうか、このすがすがしい気持ちは? 師匠との久しぶりの手合わせ、成長した自分を見せたいと言う気持ちからでしたが、もしかしたら勝てるかもと思っていたのですが、やはり無理でしたか」
仰向けになりながら目に涙を浮かべている。
嬉し涙なのか、悔し涙なのか分からないが、顔は笑っていた。
俺は、そんなハクアに手を伸ばす。
「大丈夫か?」
「はい!」
ハクアは俺の手を取ってくれる。
そんな彼女を引っ張って引き上げて立たせていると、
「サージ様! 凄いです! 学院長に勝ってしまいました。それにその本の色です」
レーナの言葉でハクアが俺の腰に下げている本へと目を向ける。
「師匠! 転生しても昔と同じ本なのです」
「ああ、元々俺の作った転生魔法には、転生前の本の色と魔法を受け継がせる効果を加えてあったんだ。その上で新たな能力を手に入れられるようにとな」
「だから、その刻印があるのですね」
「そうだ。まさか、ここまでうまくいくとは思わなかったがな」
「二人とも何のお話をしているのですか!?」
俺とハクアの話についてこれないレーナは頬を膨らませている。
「分かったよ。話すから怒らないでくれ」
俺は、ハクアとレーナに昔のことを話始めたのだった。
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