23、学院長
入学式が終わり、教室でのホームルームを行っていた。
「皆さんこんにちは! 先ほどの入学式でもご紹介がありましたが、改めて。今日からあなた達の担任になりますアリシア=レーベルです。これから一年間よろしくね。それじゃ~皆さんのことを教えて欲しいから一人ずつ自己紹介してもらいましょうかね」
アリシアはまず一番前に座る少年を指名した。
席を立ち自分の名前と使える魔法を言う生徒。
それから簡単な挨拶をして終了となった。
自己紹介はしばらく続き俺の番がやって来た。
「次はサージ=ルート君、お願いできるかしら?」
「はい!」
俺はアリシアに名前が呼ばれたので返事をして立ち上がる。
すると、
「ねえあの子」
「そうね」
「まじかよ」
「なんで、あんな奴がこの学院にいるのよ」
「知るか! 受かれたこと自体が奇跡だろう」
皆小声で話し始める。
見ているのは俺の顔とかではなく本だ。
この学院に白い本を持っている俺が珍しいのもあるんだろうな。
「皆静かにしてね」
アリシアの注意で静まる教室。
クラスの中で一人俺のことを尊敬の眼差しを向けているレーナ。
俺が何を言うのか凄く楽しみにしている様子。
他のクラスメイトは俺を軽蔑と疑いの目で見ているのにだ。
まあそんなことどうでもいいか。
「僕はサージ=ルート、ルート子爵家の三男です。一応全属性の魔法と剣のスキルを使うことが出来ます。本の色は白ですが、仲良くしてもらえると嬉しいです」
他の皆と同じような自己紹介をして席に座る。
そうすると、他のクラスメイト達の視線が全てに俺へと集まっている。
まあ気にしなければ別にどうってこともない。
「次は、レーナ=アルベノクさんね、お願いできるかしら?」
「はい!」
レーナはきれいな赤い髪を揺らしながら立ち上がる。
「私はレーナ=アルベノク、アルベノク公爵家の三女です。剣のスキルを使うことが出来ます。皆様と一緒に切磋琢磨し強くなりたいと思っています。これから三年間よろしくお願いいたします」
レーナは自己紹介が終わると同時に席に座る。
クラスメイト達はポカーンとした顔をしていた。
それからも生徒達の自己紹介が続いて、最後の生徒の自己紹介が終わると、
「これで全員終わりだね。それじゃあこれからの予定だけど、明日から授業開始となります。一年生の間は基礎授業だね。それと近接戦の授業があります。ただ、剣とか近接戦の出来る武器スキルを持っている生徒は使えないからね。この授業はもしもの時にも対処できるようにという授業だからね。それから、来月には四人一組で行う演習があります。誰とチームを組んでい貰ってもいいですが、毎年何人かの負傷者が出ていますので、気を抜かずに緊張感を持つようにしてください」
「はい!」
「それではホームルームを終わります」
ホームルームは終了した。
クラスメイト達は、元々中のいい者同士や、気になるクラスメイトの元へ行く者など様々であったが、俺とレーナの元へクラスメイトが集まってくることはなかった。
「サージ様、帰りましょう」
レーナは俺の元へとやって来て声を掛けてくれる。
気を使っているわけでもないだろうが、少し寂しいと言った顔をしている。
特にすることもないし、帰ろうと思い席を立つと同時に、教室のトビラが急に開いた。
ガラガラガラガラ!
「このクラスにサージ=ルート君はいるかな?」
教室の中に入ってきたのは透き通るような白い髪に、白い肌、誰が見ても絶世の美女に見える整った顔。
クラスの男子全員が入って来た彼女に目を奪われている。
この学院の学園長であるハクア=ホールである。
「サージ=ルートは僕ですが、学院長がどうなさったのですか?」
彼女の声に答える。
「そうか、君が白い本を持つと言う生徒か。少し話があるので学院長室に来てもらっていいかな?」
「分かりました。ごめんレーナ、先に帰ってもらっていいかな?」
学院長に呼ばれて仕方がないと思い、レーナの誘いを断ろうとすると、
「わ、私も一緒に行ってはダメですか!?」
「君は誰かな!? 私はサージ君に話があるんだけど」
「私はサージ様の弟子です! そして友達です!」
「ふ~ん、弟子、ね~? どうなのかなサージ君」
正直なんて答えたらいいのか分からん。
転生後も前も、こんな展開になったことはない。
そんな俺にどう答えろと言うのだ!
「どうなのですか、サージ様!」
「分かった。学院長、彼女、レーナは俺の友達であり、剣を教えた弟子みたいな物です。ですので一緒についてきてもらってもいいですか?」
「君が本当にそれでいいのなら私はかまわないよ」
「ありがとうございます」
「ただ、どうなっても知らないよ」
凄く含みのある言い方、凄く気なるがこのままではレーナも納得しないだろうから仕方がない。
このタイミングで学院長が俺に声を掛けてきたということはたぶんあのことについて聞こうと言うのだろうな。
まあ、レーナにならばれてもいいかもな。
俺はこれから起こることを予想しながら学院長室へと向かうのだった。
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