21、結果
学園の一角、教師陣が集まっていた。
今は、入学試験を終えた日の夕方、今年の合格者を決めるための話し合いが行われていた。
殆どの合格者は決まりあと二人をどうするかという話になっていた。
その二人とは言うまでもない、レーナとサージであった。
「レーナ=アルベノク、この子は合格でいいんではないか」
「だが、剣しか使えない出来損ないのだぞ」
「だが、あのレリックがかなり高く評価している。彼がここまで評価することなどない。それに剣だけでそこまで言わせる彼女の実力ならどうにかなるだろう」
「そうですね。彼女ほどの実力があれば問題ないでしょう」
「ではレーナ=アルベノクは合格」
レーナの合格決まった。
そして、
「次はこの少年か~」
「確か、今年卒業したレイク=ルートの弟であったな」
「彼は優秀だった。魔法もさることながら頭の回転も速く将来はどんな道に進むことも可能だろう」
「そう考えると、その弟と言うことはある程度は才能があるということか」
「いや、レリックの話では本の色は白と言うことだ」
「白か、学院長と同じでもダメだろうな」
他の教師陣もダメだと考えて頭を悩ませているのである。
その原因となったのは、サージがレリックに勝ったという報告が上がっているからである。
「だが、このサージと言う少年はあのレリックに勝ったんだろ」
「そうなんだよね。実力なら間違いなく王都の冒険者の中でもトップ。国からの信頼があるあのレリックになんだよね」
「彼の実力はそれほどなのか」
「話によると、剣のスキル以外に魔法も使っていたらしいよ」
「え!」
「どうしたのですか学院長」
「いえ、何にもなんにもないです」
学院長はあることを考えた。
本の色に名前、それにこの世界では考えられない武器スキルと魔法を両方使える少年の話。
もしかしたらあの人かもしれない。
でも違うかもしれない。
その考えが頭の中をめぐり他の話が入ってこない学院長。
「それでどういたしますか。実力は申し分ないですが、本の色が色ですからな」
「そうですね。伝統あるこの学院に無能の白が入るのは」
「ええ、伝統に傷がつきます」
教師陣は学院の伝統でなく名声に傷がつくことを恐れているのだ。
本来のこの学院の目的は将来勇者や賢者と呼べれる者を育てること、だがその目的も時代と共に薄れてきて、今では学院の名を売ることのみを考える教師陣ばかり。
卒業後の進路を勝手に変えられた生徒もいるとか。
「そのような事生徒達には関係ないでしょ。もともとこの学院は、どんな生徒でも受け入れることをもっとうにしていました。ですが、人数的にも希望される者達を全員を受け入れるのは現実的に不可能なことから試験を行っております。これは私を育ててくださった賢者様の考えを元にしているからです」
「ですが、この学院の運営費は国から出ております。きれいごとだけではやっていけないのですよ」
「それでもです。そして、そのような将来的に可能性のある生徒をより伸ばすことこそ我々の使命です。ですので、サージ=ルートを合格とし、入学を認めます。」
学院長の一言で今年入学生徒百名が決まったのだった。
それから二日が経ち、合格者発表の日を迎えた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
試験から二日が経ち、結果発表の日を迎えた。
今はレーナと一緒に試験の結果を見ようと学院へと向かっていた。
合格していれば晴れて勇者学院の生徒になれる。
隣で心配そうにしているレーナ。
元々自分に自信がないレーナは、この二日間試験結果のことばかりで鍛錬に身が入っていなかった。
いくら俺が大丈夫だと言っても心配してばかり、今日結果を見るまではどうしようもないだろう。
「心配するな、試験官のレリックさんだって言ってただろう、一番の受験生だって。それだけレーナの実力を認めていたってことだ! だから大丈夫だよ。そんなことよりも俺の方が心配だな」
「大丈夫です! 私が受かっていてサージ様が受からないなんてことありえません!」
「そうだな」
俺たちはそんな会話をしながら坂を上っていく。
学園の前には大きな看板が出されておりそこには合格者の受験番号が表示されている。
一万人近い受験者の中から百名の選ばれた生徒の番号。
俺とレーナは手に持っている受験表を見ながら自分の番号があるかを探す。
周りからは受かった喜びの声や、落ちたことを悲しむ声など様々な声が聞こえてきた。
そんな不安な中、
「サージ様ありました。私とサージ様の番号ありました」
レーナが泣きながら俺達の番号を見つけて事を教えてくれる。
俺は、レーナが指さす方向を見て、確かにレーナの千七十九番と、俺の千八十番があることを確認する。
まずは二人そろって合格したことをに一安心したところで、
「では、受付に行きましょうか」
俺はレーナの手を引いて合格した者達が受付を行っている所へと向かった。
そこには少し長めの列が出来ており俺達もその列に並ぶ。
前に並ぶ人達から、これから楽しみだとか、声が聞こえてくる。
それから待つこと一時間、やっと俺達の番がやって来た。
「では次の方どうぞ!」
先にレーナが呼ばれた。
その後すぐ、
「次の方」
俺も呼ばれたので、呼んだ人のいるところに向かう。
「では受験票をお願いいたします」
俺は指示に従い、受験票を渡す。
「サージ=ルート様ですね。合格おめでとうございます。こちらが制服と教科書類になります。それと、本日より学院内にある寮のご利用が可能になります。入学式は一週間後になりますが、既に部屋の用意は出来ておりますので、それまでにお荷物の移動などをお願いいたします」
これにより、合格発表と手続きは終了となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます