20、入学試験 6

 やっと俺の番、か。

 

 俺がゆっくりと剣を構えていると先にレリックが攻めてくる。

 その光景に、


「ええ! なんで試験官が先に攻撃を仕掛けているの?」

「そうよね。さっきまでは受験生から先に攻撃をしていたのに」


 レリックの行動に皆疑問を浮かべている。

 俺がレリックに見せた隙、これはわざとであるが、これはレリックも分かっているだろう。

 先ほどの会話で、俺の力を見たくなったのだろうな。


「受けきれるか! ハヤブサ!」


 俺との距離が後三メートルに所で、剣と同じスキル、ハヤブサを使い加速してくる。

 ハヤブサによって急激に間合いを詰めるレリック。

 俺はまだ戦闘準備が整っていない状態。


「こちだけだったのかな」

「やってみれば分かるさ」


 レリックは無謀に状態の俺を切るつけようとしてくるが、


「能力向上、早切り!」


 身体強化で全能力値上げて、早斬りを使い剣速を上げてレリックの短剣を防ぐ。


「面白いことをするな」


 レリックは驚くよりも少し楽しそうな顔をしている。

 それに今のレリックの動きを見て楽しくなりそうだ確信した。


「それはこっちのセリフだよ。今の攻撃、手を抜いていたな」

「気づいていたのか」


 レリックは一度俺から距離を取る。

 そろそろかなと考えていると、正面より高速で二本と左右より一本ずつ短剣が飛んでくる。


「使えるよなそら」


 短剣上級スキル、短剣操作。

 最大四本までの短剣を自由に操ること出来る。

 その代わりに操作している間魔力を消費し続けるために長時間の使用は無理だが、別のスキルと組み合わせることで戦略の幅はかなり広がる。

 狙いは俺の首と言ったところから、かなり本気のようだな。


「ねえねえ、あれってスキルよね」

「う、うん。でもなんで試験でスキル使ってるの? しかも本気で殺しに行っているように見えるんだけど」

「そ、そうよね。受験生の子、確かにさっきは凄かったかけど、白本じゃ、あの攻撃は躱せないわよ」


 俺が心配されているのか、どれくらいぶりだろうな。

 周りの声は全ての俺を心配する物ばかり。

 白色は無能、何もできないと思っているのだろうな。

 でも、このくらいの攻撃なら、


「ウイングウォール」


 風の初級魔法であるウイングウォールは、自分の周りに風の壁を作り上げる魔法である。

 初級魔法のためそれほど強くはないが、操作されている剣くらいなら今の俺の魔力で作り上げた風の壁でも弾き飛ばせる。


「まじかよ。こんな奴初めて見るぞ」

「何がだ?」

「さっきお前は早斬り、剣の武器スキルを使っていたな」

「ああ」

「今度は風の初級魔法のウイングウォールを使ったな」

「それがどうかしたか?」

「何故魔法と武器スキル両方使えるんだ?」

「さてな」


 俺は、あえて答えず、正面から攻めていく。


「その程度攻撃は俺には通用しないぜ」


 正面からの攻撃に対して、受け止める構えのレリック。

 だが、そんな単純な攻撃をするはずもない。

 レリックとの距離残り一メートルの所で俺は出せる全ての殺気をレリックにぶつける。

 それにより生まれる殺気で出来た俺の幻影。

 その攻撃を受け止めようとするレリックであったが、幻影の攻撃がレリックの剣にぶつかる瞬間に消えてゆく。

 俺の作り上げて殺気で出来た幻影に気を取られている隙をつき、背後を取った俺。

 そこで魔法を発動。

 七年前の父との模擬戦で使った魔法を使い幻影を作り出す。

 俺の攻撃がフェイクであることに気づき、すぐさま背後を向くレリック。

 俺の狙い通りに動いてくれる。

 その隙に、正面へ移動して、タイミングを見はかっらて幻影を消す。

 それにより、混乱するレリック。


「背後がお留守だぜ」


 俺は、あえて声を出して攻撃する。

 それに気づくレリックは正面に向き直る。


「声を出さなければ勝てた物を」

「そうだな。だがそれでは面白くないだろ」

「お前も俺と同じ側の人間だったか」

「ああ、じゃなきゃ今ここにいないよ」


 そう、俺は強くなるために転生してきた。

 それにまだ全力は見せてもらってない。


「そう来なくちゃな。弱い受験生の相手ばかりで退屈で疲れてたんだよ」


 そういうとレリックは、


「糸」


 短剣中級スキルを発動。

 糸は、短剣を自分元へと戻すスキルだだがそれだけじゃない。

 使い慣れている者ならそのまま攻撃を仕掛けてくる。

 人間の死角である背後を取る。


 俺はそれに対して、当たる寸前で背後を体ごと向く。


「ウインド」


 風の初級魔法で、風魔法を覚えている者なら誰でも使える魔法を使う。

 正面に強い風を起こす魔法で短剣を吹き飛ばす。

 短剣は一度は俺の作った風であらぬ方向に飛んでいったが、その後レリックの元へと戻っていった。


「気づかれたか」

「ああ。短剣使いの相手をするなら一番頭に入れておかないといけない戦法だからない」

「だよね。その若さでその知識と経験、何処で積んだのか教えてもらいたいよ」

「無理だな」

「残念だけど、まあ楽しいからいいかな」


 正面からまた短剣操作で剣を飛ばしてくる。

 それに対してウインドの魔法を放つが、短剣は風に当たる寸前で左右に別れて俺に向かってくる。

 そう来るならと、真っ正面から向かって行く。

 その最中に、


「雷装」


 雷の中級魔法の雷装を発動。

 足に雷を纏わせる。

 雷の特性は麻痺とスピード。

 雷装の魔法は移動速度上げることが出来る。

 それを利用して、俺は一瞬で間合いを詰めて懐に潜り込む。


「そろそろ終わらせましょうか」

「まだまだ」


 俺の剣での攻撃を受け止めようとしてくる。

 だが、その攻撃は消えて背後から拳で一撃与える。


「まじかよ」


 最後に俺は、殺気で作り上げた幻影をレリックにぶつけて背後に回り込んだ。

 先ほどのように声を出さずに一撃を与えたのだ。


「これで僕の勝ちですね」

「ああ、楽しかったぜ」


 レリックは地面に倒れた。

 そして、俺の試験は終了したのだった。

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