17、入学試験 3
俺とレーナの話に割り込んできた男。
後ろに取り巻きらしき者達を二人連れている。
いかにも高級そうな服。
男爵、子爵よりも上のクラスの貴族であろう。
そんな奴が俺達に何の用なのか。
まあ一人しかいないわな。
「あなたは確か、ドレイク様? ではありませんか」
「そうです。私はドレイク=アルフレッド、アルフレッド伯爵家の次男にございます。レーナ殿、お久しぶりでございますが、どうしてあなたがここに?」
「ここの入学試験を受けるために決まっているいるでしょう」
「あなたがですか? アルベノク家の中でも出来損ないとされているあなたが、何故そんな意味のないことを」
「別に意味なくないだろう。この学院の入学試験は十一歳になれば誰でも受ける事が出来る。当然レーナさんにもその権利があるよ」
「っふん! 権利ね~、君にも同じ権利があると、冗談は存在だけにしてくれよ。勇者の子孫のくせにそこの出来こそないは、剣のスキルたった一つしか持っていない。そんな雑魚が記念に試験を受けられても困るんだよね。それに君もさ、その本の色は白だろう」
「そうだが」
「無能な君は常識もないのかね?」
「確かに白の本は無能の証とされているけど、この学院の学院長だって本の色は白色だが、この世界で最強の魔術師と呼ばれているじゃないか!」
「あのお方は別格だよ。賢者の弟子なんだからね」
その賢者は俺だがな。
まあ、そんなことを言ってもこいつは信じないだろうがな。
何を言っても聞きやしないな。
「君らみたいな記念受験の奴がいるから毎年無駄に人が多い。そんな邪魔な奴らがいなくなればもっと少なくてスムーズに試験が出来るんだよ」
「何を言っておられるのですか! どんな者にでも試験を受ける権利はあります。それに、私達貴族以外にも才能を持つ者は沢山います」
「貴族以外に才能を持つ者ですか? いるはずないでしょ。貴族以外の者などろくに魔法も使えない出来損ないばかり。そんな奴らに何の才能があると言うのですか」
「あなたは」
「何かな?」
「いえ、何でもありません」
何かを言おうとしたレーナだったが、拳を握りしめて堪えていた。
「まあ、公爵家の者として恥だけはされさないようにな」
ドレイクと言う男はそれだけ言って去っていった。
その後、レーナはとても悔しそうな顔をしている。
「ごめんなさい、サージ様。私のせいで、嫌な気持ちにさせてしまって」
「別にいいんだけど、彼は一体何者なんだい?」
「彼、ドレイク=アルフレッド様は、伯爵家の次男って、これはドレイク様が言っていましたね。彼は、アルフレッド家の中でも歴代二位の実力を持っていると言われています。長男であり、歴代類を見ない力を持っているゼリス様が家を継ぐことは決まっています。ですが、ゼリス様がいなければドレイク様が家を継いでいたと言われています。十一歳という若さで既に雷の中級魔法まで使いこなす天才だとか。既に戦場にまで出て戦果を挙げているそうです」
なるほどな。
それであの自信ってわけか。
だが話を聞く限りではかなり優秀だな。
十一歳でなら精々初級魔法をある程度使えたらいい方だ。
この学院の試験を受けに来た者の中には本を開かないと魔法を発動できない者だって少なくないだろう。
その中で、ドレイク程の実力を持つ者はほぼいないだろうな。
「彼はレーナさんよりもくらいは下なのにどうしてあんなに偉そうな態度をとっているんだ?」
「それは、私が出来損ないと言われているからです。この話は貴族の中でも有名な話なのです」
俺はそんな話聞いたことないぞ。
でも、レイクが初めてレーナを見たときの反応、あれは知っていた感じだった。
もしかして、俺だけ聞かされてなかったか、家が田舎領主でその話が届かずに、レイクは学園でその話を聞いたのかどちらかだろうな。
まあ、どっちでもいいか。
レーナには才能があり、この一週間でかなり実力を伸ばした。
ドレイクが知るレーナとはもう別人だ。
「まあ気にするな。レーナはかなり強くなっている。試験だって大丈夫だよ」
「はい! 私頑張ります」
後はドレイクと同じ試験会場にならないことを祈るくらいだな。
俺的には、いてもいなくてもどっちでもいいんだけど、レーナが委縮してしまったら元もこもない。
それだけは勘弁してほしいと思うだけだ。
この一週間、この日のためにしてきたレーナの努力が報われて欲しい。
「これより、受験生の皆様は指定された試験場へと移動してください」
校内に放送が流れる。
やっと受験生全員が到着したらしい。
俺とレーナはそれぞれ持っている受験票を見る。
そこには八番会場と書いてある。
俺とレーナは八番会場に向かって歩き始める。
幸いにも、会場まで通路に矢印が張ってあって、道に迷うことはなかった。
今日のために教師陣が準備をしていたんだろうな。
俺達と同じ会場に向かっている受験生がかなりいる。
「全員八番会場に向かっている受験生なのですか?」
レーナはかなりびっくりしていた。
俺たちが学院に来る道中の坂道にいた受験生たちより多い。
当然俺も、これほどの人を見るのは転生前、転生後合わせても一度しか経験がない。
それも、魔人王を封印した時のパーティーの時くらいだ。
そう考えると、五百年経ってこの世界の人口はかなり増えている。
それだけ平和で、豊かになっているのだろう。
そして、俺たちは試験会場となる八番会場に到着した。
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