16、入学試験 2
勇者学院の前、
「サージにレーナさんおはよう」
「おはよう、レイク兄さん」
「おはようございます」
学院の門の前でレイクと合流した。
レイクは昨日学園を卒業していて今日これから実家へと戻る予定になっている。
その前に、俺達に今回の試験の受験表を渡すために待っていてくれた。
「二人ともこれだよ」
俺とレーナはレイクから受験票を受け取る。
そこには俺達の名前と、受験番号が書いてある。
「僕が、一丸八丸か」
「私は、一丸七九ですね」
レイクが二人分を一緒に受付してくれたために、俺とレーナは連番となっていた。
書いてある試験場も同じだし、少しは気が楽になった。
レーナもそのことにほっとしている。
「二人とも頑張れよ。サージなら問題ないと思うが、レーナさんもね」
「はい! ありがとうございます」
「頑張ってくるよ。レイク兄さん、父様によろしくね」
「ああ、父様にサージは元気だったと伝えておくよ。それと」
その後レイクは俺の耳元でこう囁いた。
「可愛い彼女を作ってたとね」
レーナに聞こえない声で言うレイク。そのことに俺は顔を真っ赤にした。
「そんなんじゃないよ!」
「ええ! どうしたのですサージ様? 大声出して」
よく分からない様子のレーナ。俺は、レーナの顔を見て急に熱くなる。たぶん今の俺の顔は真っ赤だろうな。
「たまには弟をからかってみるものだね」
「もう!」
「ごめんごめん。レーナさん、サージの事よろしくね」
「はい! 任せてください」
「うん。じゃぁ、行くな」
「うん。また三年後にね」
「ああ」
そうしてレイクは実家に向かって行った。残された俺とレーナはお互いに一度かを見合わせた後、学院へと入って行く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
学院の中に入るとかなりの数の受験生の姿があった。
殆どの受験生が良い服を着ている。
たぶん貴族であろうと思う。
このゆしゃ学院は入れただけでステータスになる。
毎年一万人を超える受験生が集まり、その中からたった一握り。
百人ほどしか受からないとされている。
その上、この学院の試験を受けることが出来るのは人生の中でたった一回のみで、十一歳になってから一年以内のみ。
それ以外の者には受験資格が与えられない。
だからこそ、この学院の試験を受けて受かることはそれだけでかなり名誉なことなのである。
そして、今年の受験生も例年同様に一万人を超えてるそうで、教師陣があたふたとしている。
「流石にその中にはいないな」
「サージ様、どうかされましたか?」
俺の小声に反応するレーナ。言葉までは聞き取れなかったようで安心した。
「なんでないよ」
「ですが、先程から何かを探しているように辺りを見られているようですが?」
「そんなんじゃないよ。ただ、広い学院だと思っただけさ。それに」
俺は、ある物に目が留まる。
学院の敷地内に建てられた四つの銅像。
その中でも飛び切り大きく作られている賢者の銅像に目が行く。
「凄い像だな」
「そうですね。話ではここの学院長はこの学院の創立者であり、賢者様の唯一の弟子だったそうですよ」
「五百年前に勇者パーティーに所属していたあの賢者の?」
「はい。私の姉二人もこの学院に通っておりましたので話だけなら聞いたことがあります。現状この世界で最強の魔術師と言われる学院長はエルフ族の女性だそうですよ」
「エルフの女性で賢者の弟子か」
「はい。そんな学院長は、賢者様がなくなられてから、賢者様と勇者様方を称えてこの学院を造られたそうです。その際に賢者様以外の勇者パーティーの皆様の協力があったと聞いています」
マジか、まさかハクアがそんなことをしていたとは。
「だが、どんな本を読んでもそんな話見たことないけどな」
「それはそのはずです。この話は勇者パーティーの子孫にのみ受け継いできたものです。ですので今知っているのは学院長と私、アルベノク家とシュクベル家、それとフェンラー家の三家しか知らない話です」
「そんなこと俺に話してよかったのか」
「別に隠す必要のある事でもないですし」
俺はその話を聞いて少し安心した気持ちになった。
転生するとき、ハクアはまだ十歳程。
魔法の才があったが、持っていたのは白の本。
それでもたった三年で中級魔法まで使えるようになった。
流石に武器に関することは知識がなかった為に教える事は出来なかったが、それでも努力次第ではもっと高みを目指せると思っていたが、まさか世界最強の魔術師と呼ばれているとは驚きだ。
転生前に一冊の本をあの小屋に残していたが、気づいてくれたんだろうな。
あの時の約束を守るときが来たんだ。
俺がこの学院の入学試験を受けると決めたのは彼女に会いたかったからだ。
最初は渋々取った弟子だったが、三年間、一緒に暮らすうちに掛け替えのない存在へとなっていた。
一時は転生をせずにこのままハクアの成長を見守りたいと思っていたくらいだ。
結局、強さを求めて転生する道を選んだわけだが。
「そうだったの。その話が聞けただけでもレーナさんに会えてよかったよ」
「何を言っているんですか。本番はこれからですよ。しっかりと私の戦いを見てもらわないとですからね」
「分かってますよ。お互いに頑張りましょうね」
俺達が試験開始までの待ち時間で楽しく話していると、
「君は、あのアルベノク家の出来損ないじゃないか。しかも隣には無能な白本もいる」
見知らぬ男が話に割り込んできた。
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