15、入学試験 1

 王都に着いてから三日が経ち、入学試験の日を迎えた。

 俺もレーナもやる気十分。


「おはようございますサージ様!」

「おはよう、レーナさん! 準備ばっちりだね!」


 レーナは既に着替えて、学院へ行く準備が既に出来ていた。

 そんな俺はと言うと、今さっき起きた所でまだ寝巻の状態。


「はい! それでは私は先に下で朝食を食べていますね」

「ああ、僕も着替えたらすぐに行くよ」

「わかりました」


 レーナは下へ降りていく。


 この三日間、俺とレーナは剣の鍛錬に時間を使っていた。

 元々俺とレーナは、到着した次の日に試験の申し込みに行こうと思っていた。

 レイクが俺達二人の分の申し込みに代わりを行ってくれて、俺達は試験の最終調整に時間を使うことが出来た。

 レーナさんの剣の腕は一週間前とはもう別人。

 十分に試験で結果を残すことが出来るぐらい上達している。

 俺もレーナに剣を教える中で、自分の鍛錬も行っていた。

 そのおかげで剣の初級のスキルは大体覚えることが出来たし、一部にスキルは本を開かなくても発動できるようになった。


 今日の試験は剣と魔法、両方を使って戦うか、剣一本で行くかどうしようか少し迷っている。

 勇者学院の試験は試験管との模擬戦のみ。

 その模擬戦に勝てば合格、負ければ不合格と、言うほど簡単であれば分かりやすかったがそうでもないらしい。

 試験を受けに来た者の、戦い方やそれ以外の要素を総合的に見て判断するらしい。

 だからこそ難しいが、まあ勝てば問題なく合格できると信じていた。


 などと、考えながら服を着替えて下へ降りる。


「遅いですよ!」


 俺を待っていてくれたレーナが、俺を見て頬を膨らませながら言ってくる。


「ごめんごめん。試験のことを考えていたら少し遅くなった」

「そ、そうですか。仕方がないですね。私達にとっては一生に一度のチャンスなのですから」

「そうだね。お互い頑張らないとね」

「ええ」


 俺とレーナは、二人そろって同じ物を頼んだ。

 ここに来てからの三日間、毎日食べている朝食。

 それも後数日で終わることになる。

 試験に合格すればそのまま寮に入ることになり、落ちれば家に戻ることになるのだ。

 どちらにせよこの宿とはおさらばになる。

 その前にこの朝食を堪能しておこうと俺は、持ってこられたハムエッグとトーストを味わって食べる。


 そして、朝食を食べ終えた俺達は試験会場の学院へと向かう。

 この宿から学園までは徒歩で十分程。

 今から出れば余裕で間に合う。

 学院の入り口でレイクと待ち合わせをしている。


 学院へと近づくにつれて同じ年くらいの人達は増えていく。

 ここにいる全員今日試験を受ける受験生だからだろう。


「凄い人だね」


 レーナが周りを歩く人に少し驚いている。


「そうだね。噂には聞いていたけどこれほどとは思わなかったよ」

「私なんだかすごく緊張してきました。本当に私なんかが試験に受かれるでしょうか? 姉さんたちみたいに様々な武器を使えない私が」

「心配しなくていい。レーナさんには才能がある。絶対受かるよ」

「そうですね。そうですよね。この一週間、サージ様に剣を教えていただいたのです。受からないと恩返しができませんしね」

「その意気ですよ。僕も絶対受かります。一緒にここに通いましょう」

「はい!」


 笑顔で答えてくれるレーナ。


 そんなレーナとは逆に、周りの人達の視線が俺に集まる。

 一体何なんだと思っていると、


「ふふふ、見てあの本」

「白い本ですね。それでこの学院に受かるですって、バカじゃないのかしら」

「本当に笑えてきますね。身の程をわきまえろって話ですよ」


 ちらりと聞こえてきた声。

 あ~、なるほど。

 俺のことを見ていたわけか。

 レーナはそこに対して何も言ってこなかったため忘れていた。

 白い本の持ち主は、周りからそういう目で見られるのが普通だよな。

 この感じはかなり久々だな。


「何でしょうかこの感じ。サージ様を見て、皆様何か話されているようですが?」

「ああ、俺の本の事だよ。白い本を持っている俺が、この学院の試験に受かるって言ったから皆バカにしているんだよ」

「なんですかそれは! サージ様は、凄く強いお方です。その強さに本の色など関係ありません!」

「うんそうだね。確かにレーナさんみたいに言ってくれる人もいるよ。でも世間的に見たら白い本の持ち主は無能って言うのが常識なんだよ」

「ですが……」

「いいんだよ。僕にとってはレーナさん見たいな人がいてくれるだけで嬉しいですから。周りの目なんて気にしていませんよ。受かれば誰も文句を言わないでしょうしね」


 レーナの顔が真っ赤になる。

 どうしたんだ?


「どうかしましたか?」

「なんでもありません。それよりも早くいきましょう」


 レーナは俺の手を引いて走っていく。なんだか急に元気になった気もするが、まあいいか。


「急がなくても時間にはかなり余裕がありますよ」

「いいのです。早くいきたい気分なのです」


 そういい、より強い力で引っ張られる。

 流石に剣士だけあってかなり力が強いな。


 そして学院の前にある小さな坂を登り終え、目の前に勇者学院が現れた。

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